感染予防法を改正、従業員のワクチン接種情報確認の権利を条件付きで特定職種の雇用主に付与

(ドイツ)

ベルリン発

2021年09月15日

ドイツで改正感染症予防法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが9月15日に施行された。これにより、新型コロナウイルス感染症に対する防疫措置の段階的強化の基準について、これまでの過去7日間の人口10万人当たりの新規感染者数から、過去7日間の人口10万人当たりの入院患者数に変更された。過去7日間の人口10万人当たりの新規感染者数は、利用可能な新型コロナウイルス感染症集中治療用病床数、ワクチン接種率とともに参考値とすることになった。また、感染症予防法に基づいて連邦議会が決定する「全国規模の流行状況」(注)が適用される期間中に限り、保育所、介護施設、学校などの雇用主には、従業員のワクチン接種状況を確認する権利が付与された。ただし、この情報の利用目的は従業員の勤務態勢や配置の決定のために限定される。

産業界、感染予防にワクチン接種情報は必須と指摘

従業員によるワクチン接種状況に関する情報提供については、賛否両論の議論があった。労働組合は、従業員の接種情報は法律上の保護を受ける個人情報であるとともに、接種は確実な感染予防にはならないため、雇用主は在宅勤務などワクチン接種以外の方法で従業員の健康を確保するべき〔ドイツ労働総同盟(DGB)〕などと反発していた。一方、産業界からは「SARS-CoV-2(新型コロナウイルス感染症)労働安全施行令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(2021年4月21日4月26日記事参照)により、職場の新型コロナウイルス感染対策の構築を義務付けている中、適切な感染予防・管理を行うためには、従業員のワクチン接種状況の把握が欠かせない〔ドイツ雇用者協会連盟(BDA)〕として批判が相次いだ。ドイツ機械工業連盟(VDMA)は、従業員に雇用主への接種状況の報告義務を課さなければ、企業は職場感染リスクを低減できないと批判。ドイツ・IT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)は、IT保守など客先で業務に従事する従業員110万を抱えるIT業界にとって、従業員の接種情報取得は顧客も含めた感染防止策に重要と主張した。

(注)連邦および各州による新型コロナウイルス感染対策の根拠となるもので、現在の適用期間は11月24日まで。この期間内は、連邦政府と保健省は時限的な新型コロナウイルス関連法令の発出やこれに基づく措置を実施できる。

(中村容子)

(ドイツ)

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