コロナ労働安全基準を発表、事業所に感染防止策を示し義務付け

(ドイツ)

ベルリン発

2020年04月21日

連邦労働・社会省とドイツ法定労災組合は4月16日、ドイツ全土で適用される明確かつ義務的な労働安全基準「SARS-CoV-2(新型コロナウイルス感染症)労働安全基準外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。新型コロナウイルス感染抑制の出口戦略や経済活動の再開が議論(2020年4月16日記事参照)される中、政府は職場における感染予防対策を明示した。

「SARS-CoV-2労働安全基準」では一時措置の原則として、最低距離(1.5メートル)を常に確保できない可能性がある場合はマスクなど鼻と口を覆うものを着用すること、呼吸器の症状や発熱している人は職場や施設への立ち入りの禁止、の2点を挙げている。また雇用主には感染予防対策の実施と、労働安全の専門家や産業医による助言をもとに労働組合などとの調整を行うことが義務付けられている。

「SARS-CoV-2労働安全基準」概要は以下のとおり。

  • 従業員が屋内外問わず、1.5メートルの最低距離を保てるよう、仕切りや作業スペースの分離などを行い、定期的な換気を行う。また在宅勤務が可能な場合、在宅勤務とする。
  • 対面による出張や会議は最小限に抑え、電話やビデオ会議などの代替手段を用意する。
  • 作業を伴う業務は、可能な限り単独あるいは2~3人までのメンバーを固定したチームで行い、機械や車両を操作する際は複数の従業員による利用を可能な限り回避し、複数で共有する場合は保護手袋を着用する。
  • シフト勤務体制においては、チームメンバーを固定化させ接触者の数を低減する。
  • 社外の人による施設への立ち入りは最低限に抑える。来訪者があった場合は、来訪時間、退出時間や連絡先などの情報を可能であれば記録しておく。
  • 感染の疑いがある従業員は直ちに帰宅あるいは自宅療養をさせる。感染が確認された場合、雇用主は従業員や顧客に感染リスクがある旨の通知が行えるよう感染拡大予防対策を規定する。

フーベルトゥス・ハイル連邦労働・社会相は、「この特別な時期に働いている人には、特別な保護対策が必要だ。全国的に明確で拘束力を有する基準があることが重要だ。誰もがこの基準に準拠でき、また遵守する必要がある」と基準設定の重要性を強調した。またドイツ法定労災保険組合(DGUV)のステファン・ハシーCEOは、「(この労働安全基準は)大企業と異なり労働安全基準に関する専門家にアクセスが容易でない中小企業への支援を焦点としている」と述べている。

(中村容子)

(ドイツ)

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