2022年の歳出計画、引き続き福祉政策を重視、投資予算は拡大

(メキシコ)

メキシコ発

2021年09月10日

メキシコ大蔵公債省が9月8日に国会に提出した2022年歳出計画によると、歳出は経常的経費が前年比実質9.4%増、年金経費が6.2%増、投資的経費が14.3%増、全体では9.6%の増加となる(添付資料表1参照)。ロヘリオ・ラミレス・デ・ラ・オ大蔵公債相は2022年予算案の3つの柱として、(1)社会福祉政策の強化、(2)投資・社会開発・福祉を促進する地域開発プロジェクトへの財政支援、(3)安定した堅固な財政の重視を挙げている。

省庁別の予算(添付資料表2参照)をみると、保健省(前年比27.6%増)、観光省(同64.3%増)、環境天然資源省(同25.5%増)などの予算増額が目立つ。福祉省の予算は0.9%の増加にとどまるが、連邦省庁では公共教育省に次ぐ予算規模を確保している。保健省の予算増は、新型コロナウイルス感染症対策として病院の医療インフラ・機材の拡充やワクチン購入などに引き続き充てる。観光省予算〔657億ペソ(約3613億5000万円、1ペソ=約5.5円)〕の96.1%は観光省傘下の国家観光振興基金(FONATUR)によるマヤ観光鉄道(2020年1月16日記事2021年6月1日記事参照)の予算で、観光プロモーションが強化されるわけではない。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が重視する年金や補助金支給を中心とする総合福祉プログラムを合計すると、2022年は4,503億ペソに達し、歳出全体の8.6%を占める。その中でも、現時点では68歳以上の高齢者に支給している一律年金(2カ月ごとに2,550ペソ)が2022年からは65歳以上となるため、同年金予算が69.9%拡大する。同年金プログラムは、所得水準や他の年金制度の加入状況にかかわらず、全ての高齢者に一律支給するため、福祉予算の無駄遣いとの指摘もある。

道路建設などインフラプロジェクト向け歳出は拡大

2022年の歳出予算では、投資的経費が14.3%増、うち実物投資が17.7%増加する。AMLO大統領が重視するマヤ鉄道やドス・ボカス製油所の建設プロジェクトが大きな割合を占めるが、道路建設(13.2%増)や治水関連(3.5倍)などの予算も増えており、公共事業の拡大による建設産業の活性化と雇用創出効果が期待できる。

他方、産業政策や企業向けの支援を担当する経済省の予算は、前年比で30.8%も減少する。同省は過去3年の緊縮予算の下で予算が減らされてきた省庁で、さらなる人員や経費の削減が懸念される。AMLO政権下で企業向けの支援や産業育成のための補助金はほとんどなくなったほか、経済省の人員不足により、同省が所管する輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業プログラム(IMMEX)、産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)、鉄鋼や繊維などセンシティブ品目の輸入にともなう事前許可など、行政手続きにおける遅延が目立つようになっている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 bdd96a9b028aed84