米商務省、ネオジム磁石の輸入に関する232条調査を開始
(米国)
ニューヨーク発
2021年09月27日
米国商務省・産業安全保障局(BIS)は9月24日、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づき、ネオジム磁石の輸入が国家安全保障に与える影響に関する調査を9月21日に開始したと発表した。9月27日付の官報
で、一般からのパブリックコメントの募集(注)も開始した。
232条は、商務省が調査の結果、特定品目の輸入が国家安全保障に脅威を与えると結論付け、大統領も脅威を認定した場合、大統領に対して同品目への追加関税の発動など輸入制限措置を取る権限を与える。トランプ前政権で多用され、現在も鉄鋼・アルミニウム製品の輸入に対しては、適用除外か数量割当を認められた国以外の場合、それぞれ25%と10%の追加関税が課されている。バイデン政権による232条調査開始は今回が初となる。
商務省のプレスリリースによると、調査開始は政権が進めている重要製品のサプライチェーン見直しの取り組みと関連している(2021年6月10日、6月11日記事参照)。商務省によると、ネオジム磁石は、戦闘機やミサイル誘導システムなどの国家安全保障システムのほか、電気自動車や風力発電タービンなどの重要インフラ設備、またパソコンのハードドライブや音声機器、MRI機器にも使われている。ジーナ・レモンド商務長官は「バイデン大統領による、サプライチェーンを強化し、国内生産を拡大するための投資を奨励せよとの指示に沿い、商務省はネオジム磁石の輸入依存が国家安全保障に脅威となっているかについて232条調査を開始した」と説明している。
米国地質調査所(USGS)が2020年12月に公表した「重要鉱物の外国依存に関する調査報告書」によると、ネオジム自体は国内に埋蔵があるが、加工工程は国外で行われておりネオジム磁石は輸入に依存している。同報告書は、近年では中国の市場シェアは落ちているものの、他の希土類(レアアース)含めていまだ中国のシェアが5割を超える、と指摘している。2020年における米国のネオジム磁石(HTSコード:8505110070)の輸入額を国・地域別でみると、中国(1億653万ドル、シェア:70.2%)、日本(1,840万ドル、12.1%)、ドイツ(694万ドル、4.6%)、フィリピン(619万ドル、4.1%)の上位4カ国で全体の9割を占める(添付資料表参照)。
232条に基づく今後の手続きの流れとしては、調査開始から270日に当たる2022年6月18日までに、報告書と提言をまとめて大統領に提出することになっている。
(注)11月12日までコメントを募集する。連邦ポータルサイトで、ドケット番号「BIS-2021-0035」からオンラインで提出が可能。
(磯部真一)
(米国)
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