欧州委、復興基金の資金調達に向けたグリーンボンド枠組みを発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年09月08日

欧州委員会は9月7日、復興基金グリーンボンド(注)に関する枠組みを採択したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。欧州委は、新型コロナウイルス対策向けのEUの特別予算である復興基金の財源となるEU名義の債券の発行において、総発行額の3割となる最大2,500億ユーロ(名目額ベース)を、復興基金グリーンボンドで発行するとしている(2021年4月16日記事参照)。復興基金グリーンボンドによって調達した資金は主に、復興基金の中核部分となる「復興レジリエンス・ファシリティ(RRF)」(2021年2月15日記事参照)において、各加盟国が計画、実施するグリーン化移行対策(加盟国に対して、RRF予算の37%以上の割り当てを義務付け)に拠出される。

なお、欧州委は、復興基金グリーンボンドに関する枠組みとは別に、国や地方自治体だけでなく民間における活用を前提とした「欧州グリーンボンド」(EUGB)基準の設置規則案(2021年7月9日記事参照)を発表している。同規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会での審議、採択を経る必要があり、適用開始までに時間を要することが想定されていた。既に復興基金は予算執行を開始しており(2021年8月4日記事参照)、復興基金グリーンボンドの早期発行を目指す欧州委は、今回の枠組みに沿って、10月中には復興基金グリーンボンドの初回発行を実施する見通しだ。

グリーン化移行への拠出確保に向け、信頼できる枠組みを策定

復興基金グリーンボンドに関する枠組みは、欧州の証券業界団体である国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則に沿って策定されたものだ。同枠組みに関するセカンド・パーティ・オピニオン(独立した機関による外部評価)も既に発行されており、その原則やEUの環境、社会、ガバナンスに関する戦略に合致するものとなっている。また、この枠組みは、RRFにおけるグリーン化移行対策の投資基準に、タクソノミー規則(2021年4月22日記事参照)の技術的スクリーニング基準を組み込むなど、EUGB基準とできる限り合致する内容になっている。

欧州委は今後、復興基金グリーンボンドの発行により調達した資金が、グリーン化移行対策に適切に利用されていることを投資家などに示すべく、資金割り当ての実施内容と拠出資金の環境への影響に関する報告書を、外部評価を受けた上で、それぞれ毎年発表するとしている。

(注)グリーンボンドとは、気候変動や環境に配慮した事業向けの資金調達として発行される債券。

(吉沼啓介)

(EU)

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