欧州委、EU加盟国への復興基金の予算執行開始
(EU)
ブリュッセル発
2021年08月04日
欧州委員会は8月3日、復興基金の中核を占める「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」の予算執行を開始したと発表した。第1弾となる今回は、EU加盟国のうち最も早く審査・承認プロセス(注1)を終えたポルトガル(2021年6月18日記事参照)と、ルクセンブルク(2021年6月28日記事参照)、ベルギー(2021年6月29日記事参照)の3カ国に対するRRF予算の前払い分の提供だ。この3カ国のほかに、既に13カ国(注2)が審査・承認プロセスを終えており、欧州委はこれらの加盟国に対する前払い分予算を速やかに執行するとしている。
今回の予算執行により、この3カ国はそれぞれが作成した「復興レジリエンス計画(復興計画)」に基づき、気候変動への対応策などのグリーン化や官民のデジタル化などを含む復興政策の実施を加速させる。欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「今回の予算執行は記念すべき瞬間だ。RRF予算は、欧州グリーン・ディールや経済のデジタル化などを実現し、経済をさらに強化させるためのものであり、ついに実施段階が始まった」とその意義を強調した。
本格的な予算執行は2022年以降
今回執行されたのは、ポルトガルに22億ユーロ、ルクセンブルクに1,210万ユーロ、ベルギーに7億7,000万ユーロで、各加盟国の申請額の13%に当たる前払い分となる。残りの87%に関しては、各加盟国が復興計画に基づく事業を実施した上で、別途、欧州委に対して年2回までの財政拠出を申請することができる。欧州委は、各国の復興計画が規定する目標の達成状況を審査し、各加盟国の代表からなる経済財政委員会の意見を踏まえた上で、予算執行を順次実施する。また、欧州委は、名目額ベースで7,238億ユーロ規模のRRFの財源となるEU名義の債券のうち、2021年度に発行を予定しているのは、短期債を除き、最大800億ユーロ程度としている。このことから、RRF予算が本格的に加盟国に拠出されるのは2022年以降になると見られる。
(注1)RRFの前払い分の予算執行には、各加盟国が投資・改革案をまとめた復興計画を欧州委に提出し、欧州委が審査をした上で、EU理事会(閣僚理事会)が承認(2021年7月15日記事参照、2021年7月30日記事参照)をする必要がある。
(注2)オーストリア、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ラトビア、スロバキア、スペイン、クロアチア、キプロス、リトアニア、スロベニア。
(吉沼啓介)
(EU)
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