日系VCのケップル、BtoB向けECと物流スタートアップに出資

(エジプト)

カイロ発

2021年09月30日

日系ベンチャーキャピタル(VC)のケップル・アフリカ・ベンチャーズ(Kepple Africa Ventures外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が2021年9月に、エジプトの法人向け(BtoB)のEC(電子商取引)のカートナ(Cartona外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)と、物流プラットフォームのイラ(Illa外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に出資した。

商流を効率化するスタートアップが成長

カートナは、一般消費財や食材の商流において、メーカー・卸売業者と小売店をつなぐBtoB向けECを構築し、多くの卸業者が間に入るエジプトで、オンライン化による商流の効率化を図っている。さらに、リアルタイムの配達状況や価格比較などの情報を提供し、商流の見える化も進めている。同社は、2020年8月の起業からわずか1年で、3万業者登録、40万回注文、取引額合計10億エジプト・ポンド(約70億円、1ポンド=約7.0円)まで成長した。今後の成長も見込まれ、ケップルやドバイのVCなどから合計450万ドルの出資を受けた。ケップルのゼネラルパートナーの品田諭志氏は「小売店向けのBtoBのECは、多くのスタートアップが市場参入している分野だが、カートナは自社で在庫もロジスティクスも持たず、アセットライトであることが特長だ。既にインフラがある程度整っているエジプトだからこそ、オンラインの強みをとことん追求し、安さと品ぞろえで勝負する、異彩を放ったモデルが魅力だ」と述べる。

物流手配のオンライン化も進む

イラは、BtoB向けトラック物流プラットフォームを提供し、製造・小売・飲食業などの配達ニーズと、運輸業者をつなぐ。エジプトの物流は非効率かつ不透明で配達遅延も多いが、同社はITを活用した配達状況の見える化や、データ分析に基づく情報提供を行う。2019年の起業以降、同社は、一般消費財や食材輸送に焦点を当て、国際的な大手飲料メーカーの輸送を手掛けるなど成長してきた。品田氏は「物流プラットフォームのビジネスにおいて、オンデマンドでなく契約ベースで顧客を抱え込み、4PL(注)を目指す動きが加速するなか、イラはエジプトのFMCG(日用消費財)向けロジスティクスでこのモデルのパイオニアであることが投資の決め手となった」と述べる。

エジプトでは、スタートアップ向けの出資が相次ぐ(2021年6月18日記事参照)。オートバイ物流手配を提供するハラン(2019年11月8日付地域・分析レポート参照)、米国で上場予定のミニバス・ライドシェアのスエフル(2021年8月20日記事参照)等、物流・交通分野で新たな企業が活躍する。

(注)4PL(フォースパーティ・ロジスティクス)とは、原料調達から完成品輸送まで物流全般を委託される3PL(サードパーティ・ロジスティクス)に加えて、物流戦略の計画・コンサルティングなどまで担うビジネスモデルのこと。

(井澤壌士)

(エジプト)

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