ASEAN外相関連会合開催、ミャンマーへの特使を任命

(ASEAN、米国、中国、英国、ミャンマー)

ジャカルタ発

2021年08月13日

ASEAN外相関連会合が8月2日から6日にかけて、オンライン上で開催された。一連の会合では、ミャンマーの国軍による権力掌握後の情勢に対するASEANの対応に注目が集まった。4月に開催されたASEAN首脳級会議(2021年4月27日記事参照)で決定した「5項目の合意」のうちの1つ「ASEAN議長の特使派遣」について、ブルネイの第2外相を特使として任命することが、8月2日のASEAN外相会議で合意された(ASEAN外相会議共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

8月4日に開催された東アジアサミット(EAS)参加国外相会議(注1)に出席した中国の王毅外相は、特使の任命を支持すると発言した(中国外務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同じく、米国のアントニー・ブリンケン国務長官も特使任命を歓迎すると同時に、ミャンマー国軍に対し、暴力行為の停止や不当に拘束されている人々の解放を各国が足並みをそろえて要求すべきと主張した(米国国務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。インドネシアのレトノ・マルスディ外相は記者会見において、特使のミャンマーへの即時派遣および全ての関係者との対話実施の重要性を強調し、「9月に開催されるASEAN外相会議で、特使より進捗が報告される予定だ」と述べた(「トリビューン・ニュース」8月5日)。

米国と中国の対立が鮮明に

「新型コロナ禍」において、中国と米国はASEANに対し、それぞれ1億9,000万回分、2,300万回分の新型コロナウイルスワクチンを供与するなど、「ワクチン外交」を活発化させている(中国外務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますおよび米国国務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。両国が参加するEAS参加国外相会議では、さまざまな点で対立がみられた。新疆ウイグル自治区や香港をめぐる問題では、米国と日本が懸念を表明したことに対して、王外相は「内政問題を批判する無責任な発言だ」とこれを強く牽制した(中国外務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、中国とASEAN加盟国の一部が抱える南シナ海をめぐる海洋権益問題に関しては、EAS参加国外相会議共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)において行動規範(COC)の早期締結に向けた交渉が、新型コロナ禍においても進捗していることを確認した(2021年6月11日記事参照)。一方、米国はEAS参加国外相会議において、2016年7月の常設仲裁裁判所判決(2016年7月15日記事参照)に基づき、「中国の南シナ海における領有権の主張は不法なものだ」と強調した(米国国務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

英国がASEAN対話国に

英国政府はかねてASEANの「ダイアログパートナー(対話国・地域)」(注2)となることを目指していたが(2021年4月14日記事参照)、今回のASEAN外相会議で正式に決定した。今後は、貿易・投資のみならず、安全保障や科学技術分野における英国のインド太平洋地域への関係強化が見込まれる(英国外務・英連邦・開発省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(注1)ASEAN10カ国のほか、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、米国、ロシア、インドが参加。

(注2)2021年4月時点のASEAN対話国・地域は、オーストラリア、カナダ、中国、EU、インド、日本、韓国、ニュージーランド、ロシア、米国の10カ国・地域。

(上野渉)

(ASEAN、米国、中国、英国、ミャンマー)

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