米消費者信用残高、5月は前月比10%増の高い伸び、4カ月連続の増加

(米国)

ニューヨーク発

2021年07月13日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は7月8日、5月の消費者信用残高(注1)が前月比で10.0%増加(季節調整値、年率換算)し、4兆2,793億ドルとなったことを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。増加は4カ月連続で、5月の増加率は2016年3月以来の大幅な伸びとなった(添付資料図参照)。

消費者信用残高は、クレジットやローンなどの利用が多い米国の消費動向を測る指標の1つとされている。同残高は、毎月あらかじめ決めた金額を支払うリボルビング払い残高と、自動車や教育ローンなどそれ以外の非リボルビング払い残高で構成されているが、前者は前月比11.4%増、後者は9.5%増とどちらも大幅な伸びを見せている。5月の小売売上高(前月比1.3%減)に関する2021年6月17日記事でも、新型コロナウイルス感染の回復に伴うモノからサービスへの消費の移行が指摘されたが、今回発表された高い数値からも旺盛な消費マインドがうかがえる。

消費者信用残高の増加から消費動向の堅調な推移が確認できたものの、最近大きな伸びがみられる住宅ローン残高(2021年6月16日記事参照)に加え、家計のローン残高も急激な伸びを記録したことから、家計のバランスシートの悪化が懸念される。しかし、FRBが7月9日に公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した金融政策報告書では、「家計債務は所得に対して適度な水準にとどまっており、借り手はクレジットスコア(注2)の高い家計に集中している」「(新型コロナウイルス)感染拡大に対応した政府の措置が家計のバランスシートと収入を大きく支え、多くの家計が貯蓄を増やし、流動性資産を保有するようになった」と述べており、懸念には及ばないとの評価を示している。またFRBは、大手金融機関全行が健全性審査をクリアしていることを明らかにしており(2021年6月28日記事参照)、金融システムも健全と評価している。

他方、家計のバランスシートの健全性は最近の好調な株式市場に支えられた部分が大きく、今後の金融政策の変更などによって株式市場にショックが起こった場合には、バランスシートへの影響が懸念される。また、失業保険の上乗せ給付を連邦政府が設定している9月の期限よりも早期(6~7月)打ち切りを決定している州が26州に及ぶ。FRB報告書が家計のバランスシートを支えていると指摘した政府の支援内容の変化が消費にどのような影響を与えるかについても、引き続き注視が必要である。

(注1)クレジットカードなどの個人向け信用供与の残高。住宅ローンや不動産担保ローンなどは対象に含まれない。

(注2)個人の信用情報を点数化して表す指標。収入や資産、就業期間、過去の信用履歴などの個人情報を用いて定量的に評価し、融資の申請者への融資額の決定に活用される。

(宮野慶太)

(米国)

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