米超党派20議員、バイデン大統領にメキシコのエネルギー政策問題視の書簡送付

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2021年07月27日

米国の共和党と民主党の上下両院の20議員が連名で7月20日、ジョー・バイデン大統領に書簡を送付した。書簡では、メキシコ政府が進めている昨今のエネルギー分野の法改正によって米国企業のビジネス参入機会が深刻に制限されていると指摘。これは「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の精神と規定に反する」とし、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領との外交対話で違反行為に言及することを求めている(ビセンテ・ゴンサレス下院議員プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

今回の書簡に名を連ねる議員の多くは、既に2020年10月23日にドナルド・トランプ大統領(当時)に対して、それまでのメキシコのエネルギー政策を問題視する書簡を送っていた(2020年10月26日記事参照)。2021年3~5月にメキシコの電力産業法改正(2021年3月11日記事参照)や炭化水素法改正(2021年5月6日記事参照)、炭化水素法施行令の付則13条改正(2021年5月21日記事参照)が相次いで施行されたのを受け、米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表に対し、メキシコのタティアナ・クルティエール経済相との一連の対話でこの問題を言及するよう要請していたが、状況が好転しないことを受け、バイデン大統領の介入を求めたようだ。

書簡では、電力産業法の改正はメキシコ電力庁(CFE)の非効率で環境を汚染する発電所からの送電を優先することにつながり、民間事業者との競争を排除することで消費者や企業の電力コストを上昇させるとともに、二酸化炭素(CO2)の排出が2割増え、二酸化窒素(SO2)排出量も2.5倍になるとし、環境への悪影響も深刻だと主張している。さらに、電力価格上昇が北米のバリューチェーンに悪影響を与え、米国政府と企業が経済復興に注力している中で北米の競争力を低下させることになるとしている。同様に、炭化水素法の改正も深刻な懸念を米国企業に与えており、炭化水素資源の流通・貯蔵・輸出入に関する許認可付与でメキシコ政府に恣意的な判断を許し、事業者の許認可を不当に取り消すことを可能にするものだと警告した。さらに、メキシコ石油公社PEMEXに課されていたドミナント規制(注)の撤廃は、国営企業の独占状態から開かれた燃料市場の創設に向けた流れの中で決定的な役割を持っていたルールの撤廃を意味し、民間事業者の競争条件に深刻な影響を与えるとしている。

書簡では、メキシコは米国にとって最大の石油精製品の輸出先であり、天然ガスの輸出市場としても成長しており、電力市場統合のポテンシャルも大きいとして、米国企業にとってのメキシコの重要性を強調している。その上で「USMCA締結は、投資家に対して信頼を付与し、北米で相互に利益が享受できる貿易・投資の環境を助長することを意図したものだが、AMLO政権の昨今の法律や規則の改定は、PEMEXやCFEなど国営企業に対して民間事業者を不利な競争条件に置くもので、既に投資を行っている、あるいはこれから投資を検討する米国のエネルギー関連企業に大きな不安を与え、既存事業からの撤退や中長期的な投資事業の採算性を脅かすことにつながる」と警鐘を鳴らしている。

(注)非対照の規制とも呼ばれる。市場への影響力が大きく支配的(ドミナント)と判断される事業者に対し、他事業者より厳しい規制を課すこと。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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