USMCA自由貿易委の米国との2国間会合、エネルギーや労働分野がテーマ

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2021年05月21日

メキシコのタティアナ・クルティエール経済相は5月18日、前日からオンラインで開催されていた米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の自由貿易委員会(2021年5月20日記事参照)終了後の記者会見で、米国との2国間会合では、エネルギー分野や遺伝子組み換え作物の輸入規制、労働分野に関する懸念が表明されたことを明らかにした。詳細な発表はなかったが、エネルギー分野については、米国企業がメキシコの電力産業法や炭化水素法の改正による競争条件の悪化を問題視しており(2021年5月18日記事参照)、遺伝子組み換え作物の輸入規制では、2020年末にメキシコ政府が出した政令に基づき、遺伝子組み換えトウモロコシの輸入を2024年1月末までに禁止する措置を取ることが米国のトウモロコシ農家などから問題視されている。労働分野は、ゼネラルモーターズ(GM)シラオ工場での労働権侵害問題(2021年5月13日記事参照)などが議題となったもよう。クルティエール経済相は、それぞれの分野についてUSMCAの規定を順守すべく、協力的に対応するとしている。

他方、メキシコ政府は、ブルーベリーなどメキシコの農産品に対する米国側のセーフガード発動に向けた調査や、自動車分野の原産地規則に関する米国政府の解釈のメキシコ側との相違、越境陸上輸送サービスに関する米国政府の立場について懸念を表明したとしているが、詳細は明らかにしなかった。

PEMEXのガソリン市場支配力強化の法改正発効

メキシコ政府は5月19日付官報で、2014年8月11日付で公布した炭化水素法施行令の付則13条の改正施行令を公布した。これは、石油公社(PEMEX)のガソリンなど燃料販売のドミナント規制(注)を廃止する内容で、石油製品市場でのPEMEXの支配力を強めることにつながる(2021年4月27日記事参照)。改正後の付則13条は、ドミナント規制廃止の前提として、「(石油製品)市場の効率的で競争のある発展を促す経済主体のより多くの参加が獲得されたため」としているが、連邦経済競争委員会によると、PEMEXは2020年時点でもガソリン市場で86.8%、ディーゼル市場では72.2%のシェアを占めており、依然としてPEMEXの圧倒的優位の中でドミナント規制が解除されることになる。米国石油協会(API)などはこれに強い懸念を表明しており、米国との間のさらなる紛争の種に発展する可能性がある。

(注)非対照の規制とも呼ばれる。市場への影響力が大きく支配的(ドミナント)と判断される事業者に対し、他事業者より厳しい規制を課すこと。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、カナダ)

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