欧州委、グリーン・ディール対策など11の官民パートナーシップを立ち上げ

(EU)

ブリュッセル発

2021年06月16日

欧州委員会は6月14日、2021~2027年のEUの研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」(2020年12月21日記事参照)における、官民協働イニシアチブである「欧州パートナーシップ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の一環として、新たに11の官民パートナーシップを、産業界と共に立ち上げたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

欧州委は、2050年までの気候中立と2030年までの温室効果ガスの1990年比55%削減目標(2021年4月22日記事参照)を掲げる「欧州グリーン・ディール」や、2030年までの欧州のデジタル化への移行実現を目指す「デジタル化の10年間」(2021年3月12日記事参照)を推進している。欧州委は、こうした政策の実現や欧州の競争力強化に向け、「ホライズン・ヨーロッパ」の戦略計画(2021年3月17日記事参照)を2021年3月に策定しており、今回発表されたパートナーシップはこの戦略計画に基づき選定された。欧州委が「ホライズン・ヨーロッパ」から拠出する80億ユーロと、産業界などの民間パートナーや加盟国からの拠出分を合わせ、以下のパートナーシップへの研究開発費の総額は、220億ユーロ規模になる見込みだ。

  1. 欧州オープン科学クラウド(欧州の科学者が利用する研究データの保管・共有・再利用のためのクラウドサービス)
  2. 人工知能(AI)・データ・ロボット工学技術
  3. 光工学技術
  4. クリーン鉄鋼(低炭素の製鋼への移行)
  5. 「メード・イン・ヨーロッパ」(循環経済、デジタル化、気候中立を原則とした持続可能な製造業の推進)
  6. 「プロセス・フォー・プラネット」(低炭素技術と循環性に基づく加工業の強化)
  7. ヒト中心の持続可能な建造環境(高品質、低炭素、エネルギーと資源効率の良い建物やインフラの整備)
  8. 排出ゼロの道路交通(気候中立でクリーンな道路交通システムの開発)
  9. 接続・協調・自動化されたモビリティ
  10. バッテリー(競争力のある欧州産業バッテリーのバリューチェーンの推進)
  11. 排出ゼロの水上輸送

欧州委は、「共同プログラム」「共同出資」「制度化」型など様々な形態の官民パートナーシップを推進しているが、今回発表された11のパートナーシップは「共同プログラム」型で、民間のパートナーと「ホライズン・ヨーロッパ」がそれぞれ実施する。「ホライズン・ヨーロッパ」からの資金は、民間パートナーが実施する事業に直接拠出されるわけではないが、了解覚書(MOU)や契約取り決めに基づき、市場展開、スキル開発、規制面などで協働する。

また、個別のEU理事会(閣僚理事会)規則などの法令に基づく運用制度を構築することで、官民のより一体的な協働を可能にする「制度化」型のパートナーシップに関しては、欧州委は2月に、公衆衛生、デジタル技術、クリーン水素、低炭素航空機など10の分野での立ち上げを既に提案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、約100億ユーロを拠出する予定(パートナーも少なくとも同額の拠出を予定)。

(吉沼啓介)

(EU)

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