EU研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」、投資戦略を発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年03月17日

欧州委員会は3月15日、2021~2027年度の中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)(2020年12月21日記事参照)での研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」の前半4年間(2021~2024年)の戦略計画PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

EUの研究開発支援枠組みでは初の試みとなる今回の戦略計画は、「ホライズン・ヨーロッパ」(予算規模:名目額で955億ユーロ)の3つの柱の1つで、総予算の半分以上が振り分けられている「グローバルな課題と産業競争力」(2020年10月1日記事参照)に対する投資指針だ。「ホライズン・ヨーロッパ」の予算の少なくとも35%は、欧州グリーン・ディールなど気候変動対策関連の研究開発に充てられることが決まっているが、今回の戦略計画に基づき、環境関連やデジタル化への移行、新型コロナウイルスなどの危機への対応能力の強化、EUの積極的な利益擁護を目指す「開かれた戦略的自律性」に対応した政策など、以下の4つの「戦略的な方向性(strategic orientation)」に沿って投資することになる。

  1. 重要な新興デジタル技術、産業、バリューチェーンの開発の主導により、「開かれた戦略的自律性」の推進
  2. 欧州の生態系や生物多様性の復元と持続可能な天然資源の管理
  3. デジタル化に適合し、気候中立に対応した、持続可能な循環型の欧州経済の推進
  4. より強靭(きょうじん)で包摂的、民主的な欧州社会の実現

また、「各方向性」には、それぞれ影響を与えるべき分野(impact area)を設定している。例えば、方向性の1.では、データエコノミーや人工知能(AI)、スーパーコンピュータ、次世代通信規格などの先端技術、サイバーセキュリティーなど、方向性の2.では、気候変動対策や安価なクリーンエネルギー、持続可能なスマートモビリティー、循環型経済などの分野を挙げており、こうした分野への積極的な研究開発投資を進めるとみられる。また、欧州委が官民の提携先と共同で実施する「欧州パートナーシップ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」プログラムや、重点分野である「EUミッション外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(2021年2月4日記事参照)関連プログラムも、「ホライズン・ヨーロッパ」の支援対象となる。

EU理事会(閣僚理事会)は3月16日、ホライズン・ヨーロッパ設置規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を採択した。2020年12月のEU理事会との政治合意に基づき、欧州議会も4月には規則案を採択するものとみられる。規則案は両機関の採択を経て正式に成立し、2021年1月1日にさかのぼって適用されることになる。

なお、「ホライズン・ヨーロッパ」は研究開発での国際協力を重視しており、これまでのEUの研究開発支援枠組みと同様、一定の条件付きで日本などEU域外国の企業や団体の参加が可能となる見込みで、公募の開始は4月以降を予定している。

(吉沼啓介)

(EU)

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