バイデン米大統領、情報通信技術サプライチェーンへの外国の脅威継続を認定

(米国、中国、香港、北朝鮮、イラン、ロシア、キューバ、ベネズエラ)

ニューヨーク発

2021年05月13日

ジョー・バイデン米国大統領は5月11日、外国の敵対勢力が米国の情報通信技術サプライチェーン(ICTS)に脅威を与え得る状況が続いているとして、大統領令13873で認定された国家緊急事態の効力を当初の期限だった5月15日から1年間延長すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、議会にも通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

大統領令13873はドナルド・トランプ前大統領が2019年5月15日に発令したもので、その後、トランプ氏の退任直前に商務省が同令を基に、米国のICTSを保護するための最終暫定規則(IFR)を発表していた(2021年1月22日記事参照)。バイデン政権発足後も、特段変更が加えられず、3月22日から有効となっている。

このIFRは、商務長官に「外国の敵対者に所有、支配されている、またはその管轄・指示に従属する主体によって設計、開発、製造もしくは供給されたICTSの買収、輸入、移転、導入、売買または利用を含む取引で、過度もしくは容認できないリスクをもたらすもの」をケース・バイ・ケースで認定し、取引の中止かリスク軽減措置を指示する権限を与えるものとなっている。「外国の敵対者」としては、香港を含む中国、キューバ、イラン、北朝鮮、ロシア、ベネズエラの政治家ニコラス・マドゥロ(マドゥロ体制)の6つの主体を指定している。実際、ジーナ・レモンド商務長官は3月と4月に、複数の中国企業(企業名は非公開)に対して、情報提供を求める召喚令状を送ったとしている。

この規則に関しては別途、ICTS取引に関する事前の許可申請の手続きが5月19日から実施されることになっている。商務省はこの点につき、3月から4月にかけてパブリックコメントを募集していた。米国商工会議所や、多国籍企業が加盟する米情報技術産業協議会(ITI)など、情報通信産業の業界団体や個別企業らによる計20件のコメントが提出された。いずれのコメントも、IFRが対象とする範囲が広範で、国家安全保障上のリスクとなる取引の定義が曖昧な点に懸念を示している。その上で、中にはバイデン大統領が2月に発表したサプライチェーン強化の大統領令(2021年2月26日記事参照)に基づく、情報通信技術分野の評価が完了するまで今回のIFR自体を停止することを提言する声も出ている。ITIは、IFRを停止せず、事前の許可手続きを設けるならば、リスクとなる取引に関するガイダンスを明示することと、任意で負担のない手続きとすること、審査対象外(低リスク)とされる分野をあらかじめ公表することなどを求めている。5月19日までに予定どおり事前許可の手続きが発表されるか、商務省の判断が待たれる。

(磯部真一)

(米国、中国、香港、北朝鮮、イラン、ロシア、キューバ、ベネズエラ)

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