米商務省、情報通信技術サプライチェーン保護の最終暫定規則を発表、施行は3月22日から

(米国、中国、北朝鮮、イラン、ロシア、キューバ、ベネズエラ)

ニューヨーク発

2021年01月22日

米国商務省は1月19日、情報通信技術・サービス(ICTS)のサプライチェーンを保護するための最終暫定規則(IFR)を公表し、それに対するパブリックコメントの募集開始を官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示した。IFRは3月22日に有効となるが、トランプ前政権下で策定された規則をバイデン新政権がそのまま引き継ぐかは不透明だ。

IFRは、2019年11月に商務省が公開した規則案に対して提出されたパブリックコメントを反映したもの(2019年11月27日記事参照)。2021年3月22日から有効となるが、それまでの間に再度、パブリックコメントを募集する(注1)。規則制定の背景には、近年「外国の敵対者(foreign adversary)」による米国の情報通信技術網に対するサイバー攻撃などが増えていることがあり、官報内でも米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)のレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどを参照した、としている。

IFRの基本的な骨格は2019年11月発表の規則案のとおりで、商務長官が「外国の敵対者に所有、支配されている、またはその管轄・指示に従属する主体によって設計、開発、製造もしくは供給されたICTSの買収、輸入、移転、導入、売買または利用を含む取引で、過度もしくは容認できないリスクをもたらすもの」をケース・バイ・ケースで認定し、取引の中止かリスク軽減措置を指示する、となっている。今回のIFRで「外国の敵対者」として、香港を含む中国、キューバ、イラン、北朝鮮、ロシア、およびベネズエラの政治家ニコラス・マドゥロ(マドゥロ体制)の6つの主体が指定された。よって、これら主体に「所有、支配されている、またはその管轄・指示に従属する」(注2)企業などとICTSに関して取引する場合は注意が必要となる。しかし、あらゆるICTS取引が対象となるわけではなく、IFRは(1)米国の司法権がおよぶ個人・法人または資産に関する取引で、(2)外国または外国人が何かしらの利害関係を持つ資産を含み、(3)2021年1月19日以降に開始、交渉中、完了した取引で、(4)6つの技術分野(添付資料参照)に関する場合を対象にする、としている。

商務長官は、要件に合致し得る取引情報を入手した場合、1回目の省庁間協議を行い、第1段階の判断を下す。そこで、取引の禁止かリスク軽減措置が必要と判断した場合、その旨を取引の関係者に官報または個別の郵送手段で通知する。取引の関係者には、商務長官の通知から30日以内に書面での反論の機会が与えられる。反論があった場合には、商務長官は2回目の省庁間協議を行い、審査開始から原則180日以内に(1)禁止、(2)禁止せず、(3)リスク軽減措置の下で許可、のいずれかの最終判断を下す。最終判断の内容は取引関係者に通知されるが、禁止の場合のみ官報で公示される。商務省は今回のIFRに関する官報の公示から60日以内に、ICTS取引に関する事前の許可申請の手続きを別途公開し、公示から120日以内に実施するとしている。

バイデン新政権では、現ロードアイランド州知事のジーナ・レモンド氏が上院で承認され次第、商務長官として本件を指揮するとみられる。しかし、現時点では新政権の情報通信分野に関する具体的な政策は明らかになっておらず、今後の情報発信を注視する必要がある。

(注1)コメントは、連邦政府ポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのドケット番号DOC-2019-0005から提出可能となっている。

(注2)官報掲載のIFRの§ 7.100条「一般条項(General)」の(c)項に、商務長官が「外国の敵対者」との関係を判断する上でのポイントが3点、例示されている。

(磯部真一)

(米国、中国、北朝鮮、イラン、ロシア、キューバ、ベネズエラ)

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