日EU首脳会談、気候中立へグリーン・アライアンス発足で合意

(EU、日本)

ブリュッセル発

2021年05月31日

欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は5月27日、菅義偉首相とテレビ会議方式で会談し、共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。会談内容は、新型コロナウイルスや気候変動対策などのグローバルな課題と、日EU経済連携協定(EPA)の着実な実施のほか、インド太平洋、中国、北朝鮮、ミャンマーをはじめとする地域情勢や安全保障など多岐にわたった。フォン・デア・ライエン委員長は会談後の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、世界規模の新型コロナウイルス対策である低・中所得国向けの国際的なワクチン供給枠組み「COVAXファシリティー」に関して、EUと日本はともに多大な貢献をしているとした。また、EUは日本向けに1億回分以上のワクチン輸出を承認しており、これは日本との結束の証しだと強調した。ミシェル常任議長も会談後の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、インド太平洋戦略に関して、日本との協力強化などに強い意欲を示すとともに、世界各地の人権や民主主義への攻撃に対して、日本と協調した行動が必要だとした。なお、共同声明では、このほかに台湾海峡や香港、新疆ウイグル自治区についても言及した。

また、日本とEUは今回の会談で、初となる「日EUグリーン・アライアンス」を立ち上げたと発表した。日本とEUはともに2050年までの温室効果ガス排出の実質ゼロを目指しており、グリーン・アライアンスにより、エネルギー移行や環境保護、持続可能な製品や技術に関する規制、持続可能な金融、途上国の脱炭素移行支援などの分野で、日EU協力を加速させることで一致した。発表した文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、気候中立目標の達成には、持続可能な低炭素エネルギーへの移行が重要とし、洋上風力などの再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵技術、再生可能エネルギー由来だけでなく、低炭素の水素を含めた水素技術や炭素回収・利用・貯蔵など持続可能な低炭素技術の分野で協力を強化する。EUで議論となっている天然ガスの位置づけ(2021年4月22日記事参照2020年12月15日記事参照)については、移行期における天然ガスの果たす重要な役割を認識するとした上で、脱炭素と再生可能なガスについて議論を進めると表現するにとどまった。このほか、プラスチック製品などのデザインや基準、廃棄物管理などでの協働や、低炭素技術などにおける規制分野での協力も深化させるとした。さらに、途上国向けの支援策として、一部の国に裁量の余地を残すものの、「排出削減対策が講じられていない」石炭火力発電に対しては投資や援助を全面的に終了させる方向性で合意した。

(吉沼啓介)

(EU、日本)

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