サンドゥ大統領、権力掌握に向け議会解散と前倒し選挙を実施へ

(モルドバ)

欧州ロシアCIS課

2021年05月06日

モルドバのマイア・サンドゥ大統領は4月28日、議会(一院制)の解散と任期満了前の前倒し選挙実施に関する大統領令に署名した。投票日は2021年7月11日。

今回の大統領令の内容は、モルドバ憲法裁判所の決定に基づくもの。サンドゥ大統領は2020年12月に就任した後(2021年1月4日記事参照)、2度の組閣を試みたが、イゴル・ドドン前大統領の影響下にある議会多数派が否決。憲法の規定に基づき、サンドゥ大統領は2021年3月下旬に憲法裁判所に対し、議会解散と前倒し選挙実施の是非を問う審判を依頼し、憲法裁は4月15日にこれを可能とする裁定を下した(「ラジオフリーヨーロッパ・ラジオリバティ」4月15日)。

サンドゥ大統領は前倒し議会選の実施について、「現在の議会における『混沌(こんとん)とした状態』を可能な限り早期に収束する必要がある。選挙結果に基づき、議会の安定多数に基づく政府を任命しなければならない」と強調した(大統領府4月28日)。

モルドバの社会政治調査・地域発展研究所のイゴル・ショルニコフ所長は「議会解散と前倒し選挙実施はサンドゥ大統領が掲げる最重要公約の1つ。大統領は議会で多数派を形成し、政治運営に必要な権力を大統領が掌握することを目指している」と述べている(ロシア・メディア「ポリトエクスペルト」4月29日)。

前倒し議会選で、大統領が主導する政党「行動と連帯」が過半の議席を確保するのは難しいとの見方が一般的だが、2020年11月の大統領選挙(2020年11月18日記事参照)と同様に、海外在住のモルドバ人による投票を加味すれば多数派となる可能性も排除できないという声もある。モルドバ社会主義者党の元幹事長で政治学者のワレンチン・クルィロフは、現状の世論調査結果に鑑みると「行動と連帯」が多数派となる可能性は低いが、在外モルドバ人による投票を含めればこの限りでないという見方を示している。モルドバの政治学者セルゲイ・マナストィルィ氏は「在外モルドバ人による20万~25万の支持票を獲得できれば、過半を握る可能性はある」と指摘している(ロシア国営メディア「スプートニク」モルドバ版4月28日)。

(齋藤寛)

(モルドバ)

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