スコットランド議会選で独立派が過半数、下院補選は労働党敗北で党内に衝撃

(英国)

ロンドン発

2021年05月10日

北アイルランドを除く英国各地で5月6日、地方選挙が実施され、週末にかけて開票作業が行われた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で前年から延期されていたイングランドの地方自治体選や市長選も多数あり、通常より大規模な地方選となった。

注目されたスコットランド議会選挙(定数129)は、与党のスコットランド国民党(SNP)が前回2016年選挙より1議席多い64議席を獲得した。過半数には1議席届かなかったが、前回より2議席多い8議席を獲得した緑の党と合わせ、スコットランド独立支持政党が過半数を確保。2014年に否決された独立の是非を問う住民投票の実現に向けて前進した。法的拘束力を伴う住民投票の実施には、英国政府の同意が必要で、ボリス・ジョンソン首相は一貫して認めない考えを示している。これに対して、スコットランド自治政府首相のニコラ・スタージョンSNP党首は選挙結果を踏まえ、「(住民投票実施の可否が)法廷に持ち込まれるなら、英国政府がスコットランドの民主主義を拒絶したことになる」と述べ、住民投票実現に向けて英国政府との対決姿勢を強めている。

ウェールズ議会選挙(定数60)では、与党のウェールズ労働党が1議席増の30議席を獲得。新型コロナウイルス対策で存在感を発揮したウェールズ自治政府のマーク・ドレイクフォード首相が信任を得た。

イングランド13都市圏の市長選でも労働党が健闘し、2期目を賭けたロンドンのサディク・カーン市長ら同党候補者が11都市圏で勝利。うち2つは、前回保守党が勝利した都市圏からの奪還となった。ロンドン市議会(定数25)も労働党が11議席を獲得し、第1党の座を維持。他方、イングランドの143地方自治体(カウンシル)の議会選では、保守党が勝利した議会が前回より13増えて63自治体となり、労働党の勝利は8減の44議会となった。

下院補選は労働党の牙城で保守党勝利

地方選に合わせ、イングランド北東部のハートルプールで下院議員の補欠選挙が行われ、政権与党・保守党の候補者が勝利した。同選挙区は1974年の創設以来一貫して労働党が議席を確保し、前回2019年の下院総選挙(2019年12月13日記事参照)でも保守党旋風が吹き荒れる中、労働党が勝利していた。このため、同選挙区を落とした労働党では衝撃が広がっている。

労働党党首就任後(2020年4月6日記事参照)初めて大型選挙に臨んだキア・スターマー党首は、補選敗北について、メディアの取材に「激しく落胆している」とコメント。「われわれは党として変革したが、内部での議論に終始し、十分に強固な主張を国民に提示できていなかった」と続け、有権者からの信頼回復が不可欠との考えを示した。5月9日には影の内閣の改造を断行。求心力回復を急いでいる。

(宮崎拓)

(英国)

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