EU、新規食品として昆虫を初承認

(EU、フランス)

ブリュッセル発

2021年05月10日

欧州委員会とEU加盟国の代表で構成する動植物・食品・飼料常設委員会(PAFF Committee)は5月3日、欧州委が提案していた、乾燥イエロー・ミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)を使用した食品の販売に関する実施規則案を承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。欧州委は、2018年2月にフランスの昆虫食品製造EAPグループのアグロヌトリス(Agronutris)の販売承認申請を受け、欧州食品安全機関(EFSA)による安全性評価(2021年1月18日記事参照)を経て、イエロー・ミールワームを原料とする食品の販売承認とEUの「新規食品(Novel Food)」リストの更新を同常設委員会に諮っていた。今後、欧州委が規則案を採択して公布すると、正式にEU市場での販売が可能となる。

昆虫が新規食品としてEUで承認されたのは今回が初めてだ。欧州委によると、EUでは昆虫食品市場はまだ非常にニッチな市場だが、ほかに11件(5月6日時点)の昆虫食品の申請について、EFSAは現在安全性評価を行っている。昆虫食品に抵抗を抱く消費者は少なくないが、安全性が確認され、販売される製品が増えれば、市場が拡大する可能性がある。

新型コロナ危機からの経済復興策でも注目の昆虫食品・飼料

「欧州グリーン・ディール」やその関連戦略で持続可能な食料生産や農業の環境負荷の軽減を目指すEUは、昆虫の食品・飼料への利用の促進、養殖による生産量の増加を目指し、研究開発支援も盛んに行っている。例えば、EUの研究開発支援プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」では、新たなタンパク源として昆虫の可能性に注目し、昆虫ベースのタンパク質が主要な研究領域の1つとしている。また、EU加盟国の新型コロナウイルス危機からの経済復興策でも注目されている例もある。今回、販売承認申請を行ったアグロヌトリスが本社を置くフランスでは、2020年11月に復興策の一環として、製造業の国内生産強化のため政府が支援する総額6億8,000万ユーロ規模の民間投資プロジェクトを発表(2020年11月26日記事参照)したが、アグロヌトリスの新工場建設計画が投資プロジェクトの1つとして選ばれ、政府から830万ユーロの支援を受けることになった。昆虫関連では、同社以外にも飼料用昆虫の生産・加工を行うフランスのイノバフィード(InnovaFeed)のプロジェクトが選ばれている。流通・消費の拡大に向けた動きと並んで、EUと加盟国が取り組む昆虫食品の研究開発・生産への支援も注目だ。

写真 昆虫でEU初の「新規食品」に認められたイエロー・ミールワーム(アグロヌトリス提供)

昆虫でEU初の「新規食品」に認められたイエロー・ミールワーム(アグロヌトリス提供)

写真 製造の様子。アグロヌトリスはフランス初の昆虫の養殖とタンパク質への加工に特化したバイオテクノロジー企業(アグロヌトリス提供)

製造の様子。アグロヌトリスはフランス初の昆虫の養殖とタンパク質への加工に特化したバイオテクノロジー企業(アグロヌトリス提供)

(滝澤祥子)

(EU、フランス)

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