ロサンゼルス郡・市、ゼロエミッション化に向けた取り組みを加速

(米国)

ロサンゼルス発

2021年05月20日

米国ロサンゼルス郡管理委員会(County of Los Angeles Board of Supervisors)は4月20日、ゼロエミッション・インフラ計画を承認し、同郡の電気自動車(EV)用充電設備を2025年までに6万基、2035年までに7万基に増設する方針を示した。現在、同郡のEV用充電設備は2万基に満たない。カリフォルニア州は、2035年までに新車販売する乗用車やトラックを、2045年までには新車販売する中型・大型トラックをゼロエミッション車両とする方針を示しており、今回の計画承認はその実現の弾みになるとみられる(2020年10月2日記事2020年7月3日記事参照)。

ロサンゼルス郡では州の取り組みに伴い、ゼロエミッション化が活発に進められている(2021年5月10日記事参照)。例えば、ロサンゼルス港湾局やロングビーチ港湾局は、2017年に「Clean Air Action Plan」を改定し、2030年までにコンテナターミナル内で使用する設備をゼロエミッションに、2035年までには港湾施設内で使用されるターミナル・トラックのゼロエミッション化を行うことが決定されている。

具体的なプロジェクトとして、ロサンゼルス市が管轄するロサンゼルス港ではトヨタ自動車と米国貨物自動車メーカーのケンワースの協業により、水素を用いた大型の燃料電池トラックの実証実験が進められるとともに、トヨタ自動車によるターミナル・トラックの実証実験が進められている。既に、燃料電池トラックについては、運送業者への引き渡しが始まっている。

また、2021年3月には、ロサンゼルス港湾局と名古屋港管理組合のMOU(覚書)に基づき、上記のプロジェクトに加えて、豊田通商が進めているトップハンドラー(コンテナ用の大型フォークリフト)の水素燃料電池化や移動式水素充填(じゅうてん)車のプロジェクト、三井E&Sが進めているラバータイヤガントリークレーン(コンテナ用のヤードクレーン)、長州産業が進めている太陽光水素製造装置が、両港のプロジェクトとして正式に位置付けられた。

さらに、ロングビーチ港では、スイスのカボテック(Cavotec)がEV高速充電設備、中国の電気自動車メーカー比亜迪(BYD)が港湾施設内で使用されるEVターミナル・トラックの実証実験を行うなど、EVトラックの実用化に向けた動きが進められている。

ロサンゼルス郡管理委員会のシーラ・キュール監督官は「GM(ゼネラルモーターズ)は(2035年までに)ガソリン車の生産を終了する方針を示し、バイデン大統領はEV充電設備への投資を計画しているほか(2021年4月5日記事参照)、カリフォニア州知事は州内で販売される全ての車をゼロエミッション化する決定を下しており、ロサンゼルス郡がゼロミッションのインフラ計画を策定するには良いタイミングだ」と述べている。

(佐伯徳彦、サチエ・ヴァメーレン)

(米国)

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