米カリフォルニア州大気資源委員会、トラックに関する排出規制を決定

(米国)

ロサンゼルス発

2020年07月03日

米国カリフォルニア州大気資源委員会(California Air Resources Board、以下、CARB)は6月25日、トラックに関する排出規制(Advanced Clean Trucks Regulation)(添付資料参照)を決定した。CARBはプレスリリースで、カリフォルニア州で販売される全ての新車トラックが2045年までに無排出車(Zero Emission Vehicle)になると述べている。

トラック製造業者の販売に関する同規制の内容は次のとおり。

  • 中型車(Class 2b~3、車両総重量8,500~1万4,000ポンド):2024年に販売車両の5%、2035年に55%を無排出車とする
  • 大型車(Class4~8、車両総重量1万4,001ポンド以上):2024年に販売車両の9%、2035年に75%を無排出車とする
  • 大型牽引車(Class 7~8 Tractors、車両総重量2万6,001ポンド以上):2024年に販売車両の5%、2035年に40%の車両を無排出車とする

無排出車とは、ドライブトレイン(駆動系部品)からの排気ガスまたは温室効果ガスがゼロの車とされており、バッテリー電気自動車(BEV)や燃料電池自動車を念頭に置いている。また、乗用車の無排出車規制のように、トラックの販売にもクレジット制度(注1)を導入した。クレジットの算出に当たっては、無排出車に加え、ハイブリッド車の販売台数についても、2035年までNZEV(Near Zero Emission Vehicle)として算入することができる。

加えて、2024年から、一定規模の事業者(注2)や政府機関(州および連邦政府)は、事業所ごとに保有するトラックの種類や数量、走行距離などについて報告義務が課される。これにより、トラック製造業者は生産の見通しを立てやすくなる。

カリフォルニア州では、燃料電池技術などを用いた貨物輸送のゼロ・エミッション化を目指すZANZEFF ( Zero-and Near Zero-Emission Freight Facilities Project)と呼ばれるプロジェクトに取り組んでいる。その一環として、ロサンゼルス市港湾局、トヨタ自動車、米トラックメーカーのケンワースが連携して、燃料電池を使った大型の無排出トラックの開発を行った。なお、CARBは同プロジェクトの全体経費約8,300万ドルのうち、4,100万ドルの補助を行っている。

本規制の導入の検討開始前後から、トラック分野でも、トヨタ自動車と日野自動車、本田技研工業といすゞ自動車、ボッシュとニコラ、ダイムラーとボルボから燃料電池トラックの開発に向けた提携が相次いで発表されていた。また、テスラ社はバッテリー電気トラックであるCybertruckを発表しており、燃料電池やバッテリーによる電動化に向けた動きが今後、トラック分野でも加速することが見込まれる。

なお、カリフォルニア州以外の7州(注3)とワシントンDCは、カリフォルニア州と同様の中・大型車に対する排出規制を導入する意欲を示している。

(注1)クレジット制度では、自動車メーカーは無排出車が最終購入者に販売されるごとに「クレジット」と呼ばれるポイントを得る。このクレジットから、無排出車の義務販売台数によって生じる赤字(deficit)を差し引き、赤字になった場合には、クレジットを多く保有する他のメーカーからクレジットを購入するなど、埋め合わせを行う義務がある。より大型のトラックに大きな赤字やクレジットを割り当てており、大型車や牽引車の販売にインセンティブを付与している。

(注2)2019税年度(tax year)の米国での収益(Revenue)が5,000万ドル超で、2019年にカリフォルニアに拠点があり、車両総重量8,500ポンド超の車両を1台でも保有している事業者や、2019年に車両総重量8,500ポンド超の車両を50台以上有している者など。

(注3)コネチカット州、メーン州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州。

(佐伯徳彦)

(米国)

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