英・EUが金融サービス規制協力の覚書締結、同等性認定にはなお時間も

(英国、EU)

ロンドン発

2021年04月01日

英国財務省は3月26日、金融サービス分野での規制協力に関して、覚書を締結することでEUと合意した。双方は覚書に基づき、規制協力の枠組みを策定するとともに、情報共有する場として「英・EU共同金融規制フォーラム」を新たに設置し、同分野での「不確実性の低減」や「国境を越えた規制実施にかかる潜在的な問題の特定」などに向けて協力していくとしている(「フィナンシャル・タイムズ」紙3月26日)。

在英金融機関はこれまで「単一パスポート制度」を利用し、EU加盟各国で金融サービスを提供していた。しかし、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴い、2021年1月1日以降はEU域内に拠点を設立するなどの対策を事前に講じていない在英金融機関はEU域内の顧客に対し、原則として金融サービスの提供はできない状況となっている(2021年1月7日記事参照)。英国政府は「同等性」の認定をEU側から受けることで、一定の金融サービスの確保を目指しているものの、依然としてEU側からの認定は得られない状況だ。また、EUにも、英国が独自の規則を設けることへの懸念が根強く、慎重な姿勢を崩していないことから、同等性認定にはさらなる時間を要する可能性が高い。

イングランド銀行の規制強化スタンスに一部批判も

金融サービス分野に関する双方の隔たりは、英国からEUへの人材・資産の流出を引き起こしており、英国がブレグジットを決定した2016年の国民投票以降、約7,600人の同業界従業員と、1兆3,000億ポンド(約198兆9,000億円、1ポンド=約153円、今後の予定を含む)余りの資産が流出したとの調査結果もある(2021年3月15日記事参照)。

こうした状況に対し、イングランド銀行(中央銀行)は欧州の規制当局が必要以上にEUへの移転を促進していることの懸念を表明。在英金融機関に対し、人員や業務を移転する際にはイングランド銀行への事前承認を得るよう要求を始めたもようだ。同行のこの規制強化のスタンスには一部から「行き過ぎ」との批判も上がっており、今なお続く金融サービス分野の交渉の中で、英国・EU間の緊張をさらに高めかねないとの見方も出ている(「フィナンシャル・タイムズ」紙3月29日)。

(尾崎翔太)

(英国、EU)

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