インドネシア・シンガポールの「デジタルの架け橋」、ノングサDタウン発表会

(インドネシア、シンガポール)

ジャカルタ発

2021年03月12日

シンガポールに近いインドネシアのバタム島北部で開発が進められているデジタル新興都市「ノングサDタウン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」のオンライン発表会が3月2日に開催された。開発はインドネシアのチトラマス・グループとシナルマス、マスタープランの作成はシンガポールのサバナ・ジュロンが行う。発表会では、インドネシアのアイルランガ・ハルタルト経済調整相およびシンガポールのチャン・チュンシン貿易産業相があいさつを行い、「同都市がインドネシアとシンガポール両国にとって『デジタルの架け橋』になることを期待する」と述べた。

バタム島をインドネシアとシンガポールにとっての「デジタルの架け橋」とする構想は、両国政府および民間企業によって2018年から進められ、2018年3月に情報通信技術(ICT)分野の専門団地「ノングサ・デジタル・パーク(NDP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が設置された(2019年5月10日付地域・分析レポート参照)。チャン・チュンシン貿易産業相は開会あいさつで、「NDPでは現在、シンガポールを拠点とするスタートアップ企業などが150社入居し、インドネシア人エンジニアら900人が勤務している」と述べ、バタム島が着実にその役割を果たしているとした。

デジタル人材へのニーズの高まりに対応

マスタープラン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、「ノングサDタウン」の土地総面積は約8万6,500平方メートル、延べ面積は約10万2,700平方メートルとなる予定。自然との共生を目指した都市開発、およびテック系企業の集積や人材育成を通したデジタル経済の発展を目的としている。同都市は既存のNDPを包摂し、コワーキングスペースなどが集まる「Dタウン・エコポッド・ビレッジ」や入居企業間の共同研究などが行われる「Dタウン・キャンパス」など4つエリアに分けて都市開発が進められる。チトラマスのマイク・ウィルアン最高経営責任者(CEO)は、パネルディスカッションにおいて「シンガポールの喫緊の課題としてテック系人材の不足が叫ばれる中、インドネシアは若く優秀な人材も育ってきている」と指摘した上で、「今こそノングサDタウンが、インドネシアとシンガポールの戦略的関係をビジネス化することができるとき」と述べた。アイルランガ経済調整相は「デジタル技術が『新型コロナ禍』における柔軟かつ実践的な働き方を可能にする」と述べ、「より多くの労働者がデジタルに精通していく必要性が生じる」とデジタル人材育成の重要性を訴えた。NDPには既に、米国アップルがデジタル人材育成のためのスクールを設置している。さらに、NDPはインドネシア政府によって経済特区(SEZ)に指定されており、投資誘致も積極的に行っていく構えだ(2020年7月30日記事参照)。

(上野渉、シファ・ファウジア)

(インドネシア、シンガポール)

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