ジェトロ、米国市場に関するオンラインセミナー開催

(米国、日本)

国際経済課

2021年02月22日

ジェトロは2月19日、「日本企業の関心高まる米国市場」と題したオンラインセミナーを開催した。ジェトロ海外調査部の若松勇上席主任調査研究員と国際経済課の朝倉啓介課長代理、在米リテールストラテジスト平山幸江氏が登壇した。

同セミナーの開催は、ジェトロが実施した「2020年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(調査対象時期:2020年10月30日~12月6日)で米国市場への関心が著しく高まっている結果に対応したもの。調査結果が示した日本企業の今後2~3年の海外事業展開方針では、(1)海外で事業拡大を図る対象国・地域について、回答企業1社当たりの検討対象国・地域数(平均)が前年度から増加し、事業展開先の分散・多元化を検討する動きが強まったこと(2021年1月29日記事参照)。(2)その中でも、特に米国に「新たに進出したい」とする企業の割合が前年から大きく増加したことの2点が顕著な傾向として挙げられる。

講演ではまず、朝倉課長代理が調査結果を基に、日本企業の海外ビジネスの方針と米中摩擦などの保護貿易主義による影響について解説した。米国でのビジネスを拡大する理由では、米国の市場規模の大きさや現地(米国)生産による競争力強化を志向するコメントを紹介。また、輸出拡大理由として、市場規模と併せて、今後の市場の伸びしろや利幅の大きさが指摘されていることを説明した。保護貿易主義による影響については、米中摩擦が従来の関税措置にとどまらず、安全保障を動機とする貿易管理や投資規制の分野にも広がったことを指摘した。

若松上席主任調査研究員はバイデン新政権と米国ビジネスの見通しについて解説した。新政権の経済政策に関しては、注目されている1兆9,000億ドルの追加経済対策「米国救済計画」に触れつつ、同政権の看板政策である気候変動対策を紹介。インフラ投資を含めたリカバリープランが近々発表予定である点にも言及した。また、米中対立については、対中強硬策が継続する一方、同盟国との協調などアプローチ方法は変化すると予想。経済見通しは、新型コロナウイルスワクチンの普及と追加経済対策により上方修正されている点を指摘した。

平山氏は加速する米国小売市場のデジタル化と市場参入へのヒントについて解説した。米国小売市場には電子商取引(EC)化が急速に進展し、新型コロナ感染拡大の影響で大きく落ち込んだ2020年3~4月から短期間で回復したことを紹介。ただし、ECを通じた小売りや一部のテクノロジー分野が回復基調にある半面、旅行や飲食サービスなどで苦境が深刻化するなど、業界により回復速度が異なり二極化している点を説明した。また、回復基調にある米国小売業界で起こるデジタルトランスフォメーション(DX)の最新状況について、オペレーションでは店舗の自動化や(リアルとネットの店舗を融合させる)オムニチャネルの運営など、マーケティングではパーソナライゼーションなど、カスタマーサービスでは仮想現実など、10のトレンドについて事例を交えながら紹介。特に、20~30代の若い世代の消費者がDXによる利便性の高い小売り形態に敏感に反応している点を強調した。

このオンラインセミナーのアーカイブ映像については、ジェトロのウェブサイトで近日中に公開する予定。

(古川祐)

(米国、日本)

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