2020年度日本企業の海外展開調査、 新規海外進出意欲は衰えず、事業展開先の分散・多元化の動きも

(世界、日本)

国際経済課

2021年01月29日

ジェトロは1月29日、「2020年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」の結果を発表した。調査は2020年10月30日から12月6日にかけて、日本企業1万3,503社を対象に実施し、2,722社から回答を得た(うち中小企業2,312社、有効回答率20.2%)。

新型コロナ、6割超の日本企業の海外ビジネスに負の影響

本調査で、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大による2020年度の海外売上高への影響を尋ねたところ、海外向けにビジネスを行う企業の64.8%が、海外での売上高に「マイナスの影響(がある)」と回答した(添付資料図参照)。

また、調査時点で影響を受ける通商政策として、前年度調査の米中間の追加関税措置に代わり、「中国の輸出管理規制強化」が最も高い回答率(29.3%)となった(注1)。次に、「わからない」(28.1%)や「米国の輸出管理・投資規制強化」(25.9%)が続いた。米中摩擦が、関税措置にとどまらず、安全保障分野にとめどなく広がったことを印象付けた。

新規の海外進出意欲は衰えず、事業展開先の分散・多元化が目立つ

今後(3年程度)の海外進出方針について、海外進出の拡大を図ると回答した企業(注2)の比率は過去最低となった。一方で、「今後新たに進出したい」とする企業は全体の24.8%と前年(25.5%)から微減にとどまり、「新型コロナ禍」でも新規投資の意欲に衰えはみられなかった。

海外で事業拡大を図る対象国・地域について、1社当たりの回答国・地域数(平均)が前年度の3.8から4.9へ増加した。リスク分散意識の高まりから、事業展開先の分散・多元化を検討する動きが強まった。事業拡大を検討する国・地域としては、中国(48.1%)が引き続き首位となったが、次点のベトナム(40.9%)、米国(40.1%)も前年から比率を上げた(添付資料表参照)。特に、米国に「新たに進出したい」とする企業の割合が前年から10ポイント近く増加した。

海外ビジネスの見直しが進む

海外ビジネスリスクが顕在化する中、日本企業の海外ビジネスの見直しも進む。調査対象企業のうち、海外事業戦略や組織体制を見直す(見直した)企業の比率は約7割になった。見直し方針をみると、「販売戦略の見直し」と回答した割合(複数回答)が42.5%で最も大きかった。

デジタルを活用した販路開拓に意欲が示される中、海外向け販売の手段として越境EC(電子商取引)の活用が注目される。今後、ECの利用を拡大すると回答した企業(注3)の割合は全企業の43.9%に上った。同割合は、大企業の28.5%に対し中小企業が46.7%と、中小企業のEC活用意欲が強いことも明らかになった。また、ECの活用実績がある企業のうち、国内から海外向けの越境ECは45.5%が活用。また、海外販売でEC活用実績のある企業は合計65.0%に上る。

そのほか、本調査では貿易への取り組み、保護貿易主義の影響、中国ビジネスの方向性、デジタル関連技術の活用・課題について聞いた。

(注1)この選択肢は本年度調査で新たに追加した。

(注2)「さらに拡大を図る」または「新たに進出したい」と回答した企業。

(注3)「利用したことがあり、今後、さらなる拡大を図る」または「利用したことがないが、今後の利用を検討している」と回答した企業。

(山田広樹)

(世界、日本)

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