財政赤字拡大が続くも状況改善を説明、2021/2022年度予算案を発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2021年02月26日

南アフリカ共和国のティト・ムボウェニ財務相は2月24日、2021/2022年度(2021年4月~2022年3月)予算案を発表した。政府は喫緊の優先課題としてまず、新型コロナウイルス感染拡大を受けて2020年3月末に開始したロックダウンによる経済の打撃からの急回復を挙げた。その上で、政府が現在進めている国民への無償の新型コロナワクチン接種(2021年2月22日記事参照)を通じて、経済活動を完全に再開させることにより、2021年の実質GDP成長率は、2020年のマイナス7.2%から、3.3%のプラス成長に回復するとの予測を示した。また、その後の2022年と2023年は平均1.9%の成長を見込んでいる。

財政状況に関して、2020/2021年度の歳入は、前年度の予算案(2020年3月5日記事参照)時点から、新型コロナウイルスの影響を受けて、約2,132億ランド(約1兆5,137億円、1ランド=約7.1円)減少するとの見込みを示した。これにより、2020/2021年度の財政赤字は過去最悪となるGDP比14.0%に悪化すると発表した(前年度予算案時点では6.8%と予測)。歳出に関しては、3年度にわたりワクチン用の予算103億ランドを追加確保しながらも、2021/2022年度以降は主に公務員賃金上昇の抑制などを通じて歳出拡大を抑えていくと説明。また、2020年10月に発表した中期予算方針(2020年11月4日記事参照)時点での見通しに比べて経済状況の改善が進んでいることを受け、公的債務(グロス)のGDP比は2025/2026年度の88.9%をピークに減少していくとの予測を示した(中期予算方針時点の95.3%から上方修正)。

他方、2021/2022年度以降の歳入拡大に向けて、個人所得税の5%引き上げ(インフレ率は4%)、たばこや酒類にかかる物品税の8%引き上げなどの増税策を発表した。

今回の予算案の発表を受け、当地大手投資銀行のアナベル・ビショップ・チーフエコノミストは24日、公的債務(グロス)のGDP比のピークが前回の中期予算方針の予測より減少すると発表されたことは、大手格付け機関によるさらなる格下げを遅れさせる効果をもたらすだろうとの見方を示した。なお、通貨ランドは対米ドル2月24日終値時点で1ドル=約14.5ランドと過去数カ月上昇基調が続いており、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1月程度の水準まで回復している。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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