中小企業の約9割で売り上げが「新型コロナ前」に戻らず、米FRBレポート

(米国)

ニューヨーク発

2021年02月09日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は2月3日、中小企業の経営状況についてまとめた中小企業信用調査(Small Business Credit Survey)レポートを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによると、調査時点で回答企業の約9割は売上高が新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻っていなかった。また、約6割の企業が現在の財政状況を5段階(注)中の下位2段階と回答した。

この調査は、従業員500人未満の全米の中小企業を対象に、2020年9月から10月にかけて実施され、9,693社が回答した(回答企業の概要は添付資料表参照)。

足元の状況について、過去12カ月で収益が「減少」した企業が78%、雇用を「削減」した企業が46%だった。収益が「増加」した企業は13%、雇用を「増加」した企業が11%と、収益、雇用とも「減少」「削減」が大幅に上回り、FRBが全米で調査を開始した2016年以降で初めてのことだ。加えて、88%の企業は売上高が新型コロナウイルス感染拡大前の水準に達していないとしている。現在の財政状況を5段階中下位2段階と回答した企業の割合は全体平均57%だったが、経営者の人種別にみると、アジア系で79%、黒人系で77%、ヒスパニック系で66%と全体平均を上回り、マイノリティーの経営苦境が目立つ。

今後の見通しについて、感染拡大の結果として今後1年間に直面すると見込まれる最も重大な課題として、37%が「需要の低迷」を挙げた。また、前述した売上高がいまだ回復していないと回答した88%の企業のうち、30%が政府の追加支援なしには今後企業の存続はできないとした。

政府の支援については、91%の企業が何らかの緊急資金支援を申請したと回答した。特に「給与保護プログラム(PPP)」には82%が申請し、そのうち77%は申請どおりの資金を受領した。申請どおりの資金を受領した企業の54%は雇用の削減を行っておらず、対照的に、資金を全く受領しなかった企業の71%が雇用を削減した。また、政府の追加支援が将来実施された場合に、64%が申請すると回答した。

今回のレポート公表時点で、調査実施から既に3カ月が経過している。その間、新型コロナウイルスの感染再拡大が起こり、企業の業況はさらに悪化傾向にあったが、政府による新たな経済対策が2020年末に成立し(2021年1月4日記事参照)、申請が一度締め切られたPPPは1月に再開されている(2021年1月13日記事参照)。

(注)「最高」「とても良い」「良い」「通常」「悪い」の5段階。

(宮野慶太)

(米国)

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