米USTR、デジタル課税めぐるフランスへの追加関税賦課を停止、インドなどの措置は不当と判断

(米国、フランス、インド、イタリア、トルコ)

ニューヨーク発

2021年01月12日

米国通商代表部(USTR)は1月7日、デジタル課税を導入しているフランスからの一部輸入に対する追加関税の発動を無期限に停止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、12日に官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示した。また、USTRは6日、デジタル課税をめぐるインド、イタリア、トルコに対する調査でも、同税が国際課税の原則に反し、米企業にとって有害との判断を示しており、フランスや他の調査対象国を含めて、対抗措置を調整する方針を明かしている。

USTRはフランス政府が施行しているデジタル課税法(税率:3%)について、1974年通商法301条に基づく調査を行い、2020年7月に同国に報復関税を発動する方針を示した。その際、フランス産の化粧品やハンドバックなど13億ドル相当の輸入に対して、25%の追加関税を賦課するとしていたが、フランスとの2国間協議や多国間交渉の進展を待つため、関税の発動時期については最長で1月6日までの猶予期間を設けていた(2020年7月14日記事参照)。

USTRは追加関税を無期限停止とする理由について、「デジタル課税を導入(検討)している他の10カ国・地域への進行中の調査」を考慮したと説明している。USTRはEUと9カ国に対する調査を進めており(2020年6月4日記事参照)、1月6日にはインドとイタリア、トルコのデジタル課税が国際課税の原則に反し、米商業の妨げとの判断外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。

USTRはこれら3カ国の調査結果を公表しており、インドのデジタル課税(税率:2%)は、インドの事業所を有さない「非居住」事業者のみを対象とする点でインド企業を除外しており、課税対象企業119社のうち86社(72%)が米国企業と報告している。イタリア(同3%)は、売上高が全世界7億5,000万ユーロ以上の企業(注)を対象とする要件が実質的に米国企業を標的にしており、課税対象の6割超が米国籍だと指摘する。同様に、トルコ(同7.5%)も課税要件が米国企業にとって差別的と批判した。USTRはまた、3カ国共通で、デジタル課税が利益に対する直接税ではなく、売り上げに対する間接税であることを問題視している。

これら3カ国への対抗措置は現時点で示しておらず、USTRは「あらゆる選択肢を検討する」と述べ、フランスを含めて措置を調整する方針を示している。今回の発表を受け、米情報技術産業協会(ITI)のジェイソン・オクスマン会長はUSTRの取り組みを歓迎しつつ、必要に応じて対抗措置を取ることを支持する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同会長は他国によるデジタル課税について、2021年中ごろまでに同税に関わる多国間合意を目指すOECDでの協議を妨げるものと批判している。他方、下院でデジタル貿易に関わる検討会の共同議長を務めるスーザン・デルベネ議員(民主党、ワシントン州)は6日、ジョー・バイデン次期大統領の政権移行チームと議論したことを明らかにし、政権発足前にUSTRが報復関税を課すことへの懸念を表明していた(通商専門誌「インサイドUSトレード」1月7日)。

(注)売上高の550万ユーロ以上をデジタルサービス事業が占めることも要件となる。

(藪恭兵)

(米国、フランス、インド、イタリア、トルコ)

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