米USTR、各国のデジタル課税に対する通商法301条調査を開始、EUおよび9カ国が対象

(米国)

ニューヨーク発

2020年06月04日

米国通商代表部(USTR)は6月2日、デジタルサービス税を導入または検討中の国・地域に対する調査の開始を官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で公表した。2019年に調査を実施したフランスに続き、今回10の国・地域が調査対象に加わった。USTRは今後、7月15日までパブリックコメントの提出を受け付け、対抗措置の必要性を含め、検討を進める。

今回調査対象となった国・地域は、オーストリア、ブラジル、チェコ、EU、インド、インドネシア、イタリア、スペイン、トルコ、英国。調査では、1974年通商法301条に基づき、米国の貿易協定上の権利侵害や米ビジネスへの不当な制限が外国政府によって行われていないかを精査する。デジタルサービス税をめぐっては、USTRが2019年7月からフランスを対象に調査を進め、同年12月に同国のデジタル課税法が不公正な貿易慣行に当たるとの報告書を公表し、24億ドル相当の報復関税の案を示したが(2019年12月3日記事参照)、その後、2国間協議を進めることで合意し、対抗措置には至っていない(2020年1月30日記事参照)。

USTRの官報によると、調査対象の半数に当たる5カ国が既にデジタルサービス税を導入しており、その税率は2.0~7.5%に及ぶ。多くの場合、一定の収益規模を超えるIT企業が対象となる。そのほか、EUは新型コロナウイルスからの復興財政の一環として、全世界の収益が7億5,000万ユーロ以上で、うちEUでの収益が5,000万ユーロ以上のIT企業に対して収益の3%の課税を検討中とし、また英国は国内外で一定以上の収益を上げているIT大手を対象に収益の2%を課税する法案が成立間際としている。

USTRのロバート・ライトハイザー代表は声明の中で、トランプ大統領は米企業を標的とした課税措置を懸念していると表明した上で、「差別的な措置から米国のビジネスや労働者を守るため、われわれはあらゆる対抗措置を講じる準備がある」と述べた。議会で通商政策を所管する上院財政委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党、アイオワ州)やロン・ワイデン少数党筆頭委員(民主党、オレゴン州)も、各国のデジタルサービス税を「米企業を不当かつ差別的に狙ったもの」として、USTRを支持する声明を出している。

USTRは、調査の検討材料とするため、パブリックコメントを7月15日まで募集しており、企業・業界団体などはUSTRが指定するウェブサイト(注)からコメントや関連情報を提出できる。各国のデジタルサービス税が不当または差別的か、WTO協定またはその他国際協定に抵触していないか、必要な対抗措置は何かなどのコメントを重点的に募るとしている。「コロナ禍」の状況を鑑み、公聴会の開催は未定としているが、開催される場合は別途、周知される。

(注)パブリックコメントを含めた提出先は連邦ポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのドケット番号USTR-2020-0022となっている。

(藪恭兵)

(米国)

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