米USTR、フランスのデジタル課税に対する報復関税賦課を決定、180日以内に発動か

(米国、フランス)

ニューヨーク発

2020年07月14日

米国通商代表部(USTR)は7月10日、デジタル課税を導入するフランスからの一部輸入に対して25%の追加関税を課すと明らかにした。発動時期は最長で2021年1月6日まで猶予が設けられたが、今後の協議次第で早まる可能性もある。

今回の措置は1974年通商法301条に基づくもので、USTRは既に2019年12月にフランスからの輸入に対する報復関税案を提示していた。その後、米・フランス両国が2国間協議を進めることに合意し、OECDでデジタル課税に関わる規律形成に向けた議論を継続することを確認したため、報復関税の賦課は保留していた(2020年1月30日記事参照)。しかし、ライトハイザーUSTR代表は6月17日、下院公聴会で欧州側との交渉に進展がみられないと不満を示し、ムニューシン財務長官が欧州諸国の財務相に交渉離脱を通知したと証言するなど(注1)、交渉が難航していることを明らかにしていた。

今回の報復関税は、フランスからの輸入13億ドル(2019年)に相当する計21品目が対象となる。化粧品(肌用、また目や唇に使用するものやマニキュア、パウダーなど)(HTS3304項)、ハンドバッグ(外面が革・プラスチック・紡織用繊維製のものを含む)(HTS4202項)、せっけん(液体や泡状のものを含む)(HTS3401項)が含まれる。USTRは、フランス側のデジタル課税(税率:3%)による米IT企業への徴収額を相殺する範囲で対象を選定したと説明した。USTRは2019年12月の報復関税案(2019年12月3日記事参照)では上記以外にも、スパークリングワインや乳製品(ヨーグルトやチーズ)、食器などを含めていたが、今回の対象からは外した(注2)。

報復関税の発動時期については、フランスとの2国間協議や多国間交渉の進展を待つため、最長180日の猶予期間(2021年1月6日まで)が設けられた。ただし、USTRは進展次第で猶予期間を短縮すると言及している。上院財政委員会のチャック・グラスリー委員長(共和党、アイオワ州)とロン・ワイデン少数党筆頭委員(民主党、オレゴン州)は今回の報復関税措置を「理想的ではないが、フランス政府は米企業への一方的で不公平な懲罰税を撤回せず、米政府には選択の余地がなかった」と支持し、フランス政府に対してOECDでの多国間協議の継続を促す声明を出している。

なお、USTRはフランス以外の国・地域も対象にデジタル課税をめぐる301条調査を開始するなど、各国に圧力を掛けている(2020年6月4日記事参照)。フランス以外の国・地域への調査に関しては、パブコメの提出期限が7月15日と迫っており、ワインや食品などの国内輸入者からは報復関税を課さないようUSTRに自制を求めるコメントなどが寄せられている。

(注1)財務省報道官は、米政府は交渉離脱ではなく、新型コロナウイルスへの対応に各国が集中するために交渉の一時停止(pause)を提案したと訂正コメントを発表している。

(注2)米国はフランスを含む欧州諸国に対し、航空大手エアバスへの補助金に関わる追加関税を別途課している(2020年2月17日記事参照)。同関税の対象品目か否かはUSTRの官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で確認が可能。

(藪恭兵)

(米国、フランス)

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