日系企業の過半数、ビジネスに何らかのプラスと回答、米大統領・議会選結果のジェトロ調査

(米国)

ニューヨーク発

2021年01月15日

ジェトロは1月14日、在米日系企業を対象に実施した「米国大統領・議会選挙結果に関するクイックアンケート調査」の結果を発表した。日系企業の過半数が今回の選挙結果が自社に何らかのプラスの影響を与えるとみており、その理由として、ビザ制限の撤廃や通商政策の予見可能性の向上に期待していることなどが明らかになった。経営に影響を与える新政権の政策分野としては、法人税、新型コロナウイルス対策、ビザ政策などを挙げる企業が多かった。

米国では1月6、7日に上下両院の合同議会が開催され、2020年11月3日の大統領選で勝利した民主党のジョー・バイデン前副大統領、カマラ・ハリス上院議員が次期正副大統領に就任することが確定した(2021年1月8日記事参照)。また、1月5日に行われたジョージア州の上院2議席の決選投票の結果、上下両院で民主党が多数派になることが確定した(2021年1月8日記事参照)。ジェトロはこれを受けて、1月7、8日に在米日系企業を対象にアンケート調査を実施した。調査では、大統領・議会選挙結果がビジネスに及ぼす影響とその理由、影響を与える可能性のある新政権の政策分野、選挙結果を踏まえた対応策などについて尋ね、633社から回答を得た。

今回の選挙結果が自社に与える影響について、「プラスとマイナスの影響が同程度」との回答が28.5%で最多となり、次いで「全体としてプラスの影響」が24.8%で続いた。両者の合計は53.3%となり、半数を超える企業が今回の選挙結果が自社に何らかのプラスの影響を及ぼすとみている。他方、22.0%が「わからない」と回答しており、現時点では選挙結果の影響を測りかねる企業も一定数いた。地域別にみると、北東部では「全体としてプラスの影響」が37.4%と、選挙結果が及ぼす影響への期待が高い一方、中西部では3割超が「プラスとマイナスの影響が同程度」と回答しており、他地域に比べ慎重な見方を示した。

選挙結果が自社に何らかのプラスの影響を及ぼすとみている企業に対し、その理由(複数回答)を尋ねたところ、半数以上が「非移民ビザに対する制限の撤廃」「通商政策における予見可能性の向上」と回答し、トランプ政権の政策の修正に対する期待が示された。また、4割の企業がバイデン次期政権による新型コロナウイルスへの対応や環境・エネルギー関連施策でプラスの影響を期待する理由に挙げた。

一方、選挙結果が自社に何らかのマイナスの影響を及ぼすとみている企業に対し、その理由(複数回答)を聞いたところ、8割が「法人税などの増税」を指摘。次いで「医療保険費負担増」「環境・エネルギー規制の強化でコスト増」「労働法制強化によるコスト増」の回答が多く、ビジネスコスト上昇への懸念が上位を占めた。

自社の経営に影響を与える可能性のある新政権の政策分野(複数回答)については、「米国法人税制」(61.1%)を筆頭に、「新型コロナウイルス対応」「移民・外国人就労ビザ政策」「対中国政策」「環境・エネルギー規制(気候変動対策)」が上位に並んだ。地域別では、各地域とも法人税、新型コロナ対策が上位に挙がるが、これに加え、北東部と西部では「移民・外国人就労ビザ政策」、中西部では「対中国政策」、南部では「環境・エネルギー規制(気候変動対策)」を回答する企業が多かった。

最後に、今回の選挙結果を踏まえた対応策を自由記述形式で聞くと、在米日系企業に影響を及ぼす可能性のある新政権の政策では、環境・エネルギーとインフラ分野での対応を挙げる企業が多かった。他方で、まずは具体的政策の行方を注視したいとの声も多数聞かれた。バイデン次期政権が今後どのような具体的政策を打ち出すのか、在米日系企業の間で関心が高まっている。

アンケート結果の全文は、「米国大統領・議会選挙結果に関するクイックアンケート調査PDFファイル(1.4MB)」から閲覧できる。

(米山洋)

(米国)

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