米第117議会が招集、民主党が僅差ながらも上下両院で多数派に

(米国)

ニューヨーク発

2021年01月08日

米国連邦議会(第117議会)が1月3日に招集された。その後、6日のジョージア州の上院選決選投票の結果(2021年1月7日記事参照)を受け、上下両院で民主党が多数派になることが確定した。しかし、民主党の獲得議席数は共和党と拮抗(きっこう)しており、20日に大統領に就任予定のジョー・バイデン前副大統領(民主党)の公約実現には、政党間の調整が求められる。

2020年11月3日の連邦議会選挙(2020年11月5日記事参照)の結果、下院(定数435、任期2年)は、民主党が222議席(選挙前:232議席)、共和党が211議席(197議席)を占め、民主党が改選前から議席を減らしながらも、多数派を維持した。残る2議席は、接戦のため票の再集計が行われているニューヨーク州第22区と、当選議員(共和党)が2020年12月29日に新型コロナウイルス感染により死去したルイジアナ州第5区が、現時点で空席となっている。下院の開会にあわせ、ナンシー・ペロシ議長(民主党、カリフォルニア州)は216票を得て再任された。共和党議員が支持したケビン・マッカーシー議員(共和党、カリフォルニア州)は、引き続き少数党院内総務の座に就いた。

上院(定数100、任期6年)は、民主党(選挙前:47議席)(注1)、共和党(53議席)ともに50議席と、両党が同数で並んだ。上院の採決が可否同数の場合、議長役の副大統領が決定投票を行うため、大統領選に勝利した民主党が上院でも実質、過半数を握る。民主党が上院で多数派となるのは2015年以来となる。チャック・シューマー上院議員(民主党、ニューヨーク州)が多数党院内総務として本会議における議題の決定などの議会運営を担い、ミッチ・マコーネル上院議員(共和党、ケンタッキー州)は少数党院内総務として共和党の指導部にとどまる。

民主党が上院を押さえたことで、バイデン氏が指名する要職人事の承認手続きは、上院の単純多数決により円滑に進むとみられる。他方、バイデン氏が掲げる政策(2020年11月9日事参照)実現に向けては、民主党の上院議席数が議事妨害(フィリバスター)(注2)の回避に必要な60議席に達しておらず、医療保険や環境など多くの分野の法案審議で政党間の調整が必要となる(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版2021年1月6日)。

現在の議会構成は、議員の離党などがない限り、2022年11月の中間選挙の結果が反映されるまで続く。中間選挙では、下院で全議席、上院で34議席(現職:共和党21議席、民主党13議席)が改選対象となる。選挙分析の専門家のラリー・サバト米バージニア大学教授は同大学のウェブサイトで、既に引退を表明しているパット・トゥーミー上院議員(共和党、ペンシルベニア州)やリチャード・バー上院議員(共和党、ノースカロライナ州)などの州で接戦が見込まれ、民主党が上院で勢力を広げる可能性を指摘している。一方、今回選挙で共和党が巻き返した下院については、 歴史的に中間選挙では政権に就いていない政党が過半数を得る傾向にある(注3)。

(注1)民主党の会派に属する独立系議員2人を含む。

(注2)上院では、審議時間を制限するルールは存在せず、少数党は審議を長引かせることで投票を妨げる議事妨害が可能。ただし、上院規則に基づき、60票の投票を得れば、審議時間に制約を課す「クローチャー動議」を可決できる。

(注3)サバト教授によると、南北戦争(1861~1865年)以降で、大統領が所属する政党は、中間選挙において下院で全40回中37回敗北しており、1回の選挙で平均33議席を失っている。

(藪恭兵)

(米国)

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