米議会、大統領選におけるバイデン氏の勝利を正式に承認

(米国)

ニューヨーク発

2021年01月08日

米国連邦議会は1月6~7日に上下両院合同会議を開催し、2020年11月3日に全米各州と首都ワシントンDCで行われた大統領選挙の結果を承認する手続きを完了した。これにより、12月14日に行われた選挙人投票の結果どおり(2020年12月16日記事参照)、民主党のジョー・バイデン前副大統領とカマラ・ハリス上院議員(カリフォルニア州)が全米の選挙人538人の過半となる306人の支持票を得て、1月20日に次期正副大統領に就任することが確定した。

ワシントンDCでは6日、ドナルド・トランプ大統領の呼び掛けで集まった支持者によるデモが行われ、暴徒化した支持者が議会議事堂に侵入し、合同会議は一時中断に追い込まれた(2021年1月7日記事参照)。死者も出たこの惨事を受けて、上院議長を兼ねるマイク・ペンス副大統領は合同会議の再開時に「今日は連邦議会の歴史の中で暗い一日だった」と議事堂に乱入した暴徒らを批判した。トランプ氏に最も近い共和党議員の1人であるリンゼー・グラム上院議員(サウスカロライナ州)も「このような事態を嫌悪する。(トランプ氏を支える輪から)もう私を外してほしい。もう十分だ」とデモを扇動したトランプ氏を暗に批判し、バイデン氏の勝利を承認すべきと主張した。

米国の産業界も、今回の事態を強く非難する声明を相次いで出している。その中には、米国最大の業界団体である米国商工会議所、米大企業のCEO(最高経営責任者)で構成されるビジネスラウンドテーブル、全米製造業協会(NAM)、全米小売業協会(NRF)などが含まれる。また、ツイッターとフェイスブックは、トランプ氏の発言が暴力を扇動する恐れがあることを理由に、同氏のアカウントを一時的に凍結した。フェイスブックは、少なくとも同措置を政権移行が完了するまで延長するとしている。

トランプ氏本人は7日、ホワイトハウスの広報ディレクターのダン・スカビーノ氏のツイッターアカウントを通じて「選挙結果には完全に反対するが、1月20日には秩序だった移行が行われる」との声明を発表している。今回の暴動を理由に、イレーン・チャオ運輸長官とベッツィ・デボス教育長官が辞任を表明し、ホワイトハウス高官からも相次いで辞任を表明する動きが出ている。

民主党のナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州)やチャック・シューマー上院多数党院内総務(ニューヨーク州)はトランプ氏が暴動を扇動したことを理由に、ペンス氏に対して、合衆国憲法修正第25条(注1)に基づき、トランプ氏を即時罷免するよう呼び掛け、それが行われない場合は議会が弾劾手続き(注2)を行う考えを示している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版1月7日)。

(注1)第4項で、副大統領と閣僚メンバーの過半数が、大統領による職務上の権限および義務を遂行できないと判断し、上院仮議長と下院議長に書面で通告した場合、副大統領は直ちに大統領代行として、大統領の権限および義務を遂行するものとする旨が規定されている。その後、大統領が上院仮議長と下院議長に職務遂行不能状態は存在しない旨を書面で通告した場合、大統領は職務上の権限および義務を回復するが、上下両院それぞれの3分の2以上の賛成票により覆すことができる。

(注2)トランプ氏は既に一度、下院に弾劾訴追されているが、上院の弾劾裁判では無罪とされた(2020年2月6日記事参照)。

(磯部真一)

(米国)

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