在カナダ日系企業、米新政権の環境・エネルギー政策に期待と懸念
(カナダ、米国)
トロント発
2021年01月15日
ジェトロは1月15日、在カナダ日系企業を対象に実施した「米国大統領・議会選挙結果に関するクイックアンケート調査」の結果を発表した。在カナダ日系企業の2割強が今回の選挙結果が自社に何らかのプラスの影響を与えるとみており、その理由として、米国での環境・エネルギー政策の変化や、インフラ投資による商機の拡大、カナダに対する通商政策の改善に期待していることなどが明らかになった。経営に影響を与える新政権の政策分野としては、対カナダ・対中国政策や環境・エネルギー規制などを挙げる企業が多かった。
ジェトロでは、米国での2020年11月の大統領選挙と連邦議会選挙を受けて、1月7、8日にカナダに進出する日系企業を対象にアンケートを実施した(注)。同調査では、米国での選挙結果がビジネスに及ぼす影響とその理由、影響を与える可能性のある米新政権の政策分野などについて尋ね、在カナダ日系企業56社から回答を得た。
選挙結果が自社に与える影響について、「わからない」との回答が51.8%で最多となり、新政権が本格的な政権運営に乗り出すまでは影響が判断できないとしている企業が過半だった。一方、何らかの影響を見込む企業は25.0%を占め、「プラスの影響」を期待する企業は16.1%、「プラスとマイナスの影響が同程度」と答えた企業は7.1%、「マイナスの影響」を懸念する企業は1.8%だった。
選挙結果が自社にプラスの影響を及ぼすと回答した企業にその理由(複数回答)を尋ねたところ、半数近くの企業が「米国での環境・エネルギー規制の強化やインフラ投資の拡大に伴うカナダからの商機の拡大」や「カナダに対する通商政策の改善」と回答した。バイデン次期民主党政権の政策転換によるビジネス機会の拡大とともに、鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税(2020年8月7日記事参照)やNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し(2020年7月2日記事参照)など懸案事項が多かったトランプ政権下での米・カナダ通商関係の改善への期待が示された。
一方、選挙結果が自社に何らかのマイナスの影響を及ぼすとみている企業に対し、その理由(複数回答)を聞いたところ、全ての回答企業が「米国の環境・エネルギー規制の強化」を挙げた。民主党政権による環境政策の変化が新しい商機の可能性を生み出す一方で、キーストーンXLパイプライン(2019年4月10日記事参照)に代表される米・カナダ間の環境をめぐる課題が日系企業の事業運営にも影響を与える可能性が明らかとなった。そのほか、「バイ・アメリカン政策の強化」「保護主義的な通商政策」など、通商面での問題を懸念する声も聞かれた。
自社の経営に影響を与える可能性のある新政権の政策分野(複数回答)については、「対カナダ政策」(43社)が最も多く、次いで「環境・エネルギー規制(気候変動対策)」「対中国政策」「新型コロナウイルス対策」が上位に並んだ。
アンケート結果の全文は「米国大統領・議会選挙結果に関する在カナダ日系企業へのクイックアンケート調査(0.0B)」から閲覧できる。
(注)同様の調査は米国でも実施した。在米日系企業への米国大統領・議会選挙結果に関するクイックアンケート調査結果については2021年1月15日記事参照。
(斎藤健史)
(カナダ、米国)
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