米国の主要3閣僚がメキシコ政府のエネルギー政策を問題視
(メキシコ、米国)
メキシコ発
2021年01月19日
米国のマイク・ポンペオ国務長官、ダン・ブルイエット・エネルギー長官、ウィルバー・ロス商務長官は1月11日、メキシコのマルセロ・エブラル外相、ロシオ・ナーレ・エネルギー相、タティアナ・クルティエール経済相に宛て連名で書簡を送り、メキシコ政府の昨今のエネルギー分野における民間投資を阻害する動きを強く批判した。1月15日付で複数の主要紙が公開した書簡によると、米国の主要3閣僚は、「昨今のメキシコ政府が導入した新たな規制策、特にエネルギー分野におけるものは、メキシコの規制プロセスについての重大な不確実性を生み出し、メキシコの全体的な投資環境に害を与えている」とし、2020年7月22日付大統領覚書と9月22日の大統領とエネルギー関連規制当局との会合の内容(2020年9月29日記事参照)が伝え聞くとおりであれば、「これは深刻な問題で、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)におけるメキシコのコミットメントに対して懸念を抱かざるをえない」とつづっている。
さらに、「エネルギー政策におけるメキシコの主権は尊重するものの、われわれの国家の利益を守るため、USMCAが定める義務をメキシコに尊重するように繰り返し主張せざるを得ない」と続け、「差別待遇のない規制の枠組みに裏付けられた魅力的な投資環境は、雇用を生み出し、メキシコのエネルギー自給を達成すると同時に消費者にとって魅力的なエネルギー価格を維持するために必要な投資を促進することにつながる」と主張している。
バイデン政権移行後の対米関係の火種にも
今回の書簡は、1月20日に任期が終了する現政権の閣僚によるものだが、メキシコのエネルギー政策を問題視するのは、次期政権与党である民主党の議員にも多い(2020年10月26日記事参照)。メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール現政権は、環境対策を特に軽視しているわけではないが、エネルギー分野における国の関与を強化する目的で、電力庁(CFE)ではなく、民間企業に比較優位のある再生可能エネルギー発電が規制される方向にある。環境政策を重視するバイデン新大統領が、メキシコの現政権のエネルギー政策を問題視する可能性は高い。
USMCAでは、前身の北米自由貿易協定(NAFTA)とは異なり、国家と投資家の間の紛争解決(ISDS)メカニズムの対象となるのは全ての投資プロジェクトではなく、分野が限定されている。しかし、USMCA別添14-Eが定める米国-メキシコ間のISDS対象セクター(注)の中には、石油・ガス関連事業や発電事業が含まれているため、エネルギー分野における米国企業とメキシコ政府の投資紛争は、USMCAの下でもISDSの対象となり得る。
(注)別添14-Eの6の(b)で対象セクターとされているのは、(i)石油・ガスの探査・掘削・精製・輸送・流通、(ii)公共電力の発電、(iii)公共通信サービス、(iv)公共輸送サービス、(v)道路・鉄道・橋梁・運河の所有・運営、の5つ。
(中畑貴雄)
(メキシコ、米国)
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