英EU協定の原産地手続きで「サプライヤー宣誓書」取得を1年間猶予

(英国、EU)

ロンドン発

2021年01月04日

英EU通商・協力協定の原産地規則(2020年12月28日記事参照)について、英国の歳入関税庁(HMRC)は2020年12月29日、同規則のガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。また、前日の28日には、同協定に基づく特恵税率(無関税)の適用を申請するための簡単なガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも公表された。英国政府はこれらのガイダンスの中で、英EU間取引の輸出者に対し、「サプライヤー宣誓書」の取得を2021年末まで最長12カ月猶予することを公表。欧州委員会も2020年12月31日付のEU官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、猶予期間を設けることを発表した。

サプライヤー宣誓書は、原産地手続きにおいて、原産材料として使用した材料・部品が原産品であることを示す場合に輸出者がサプライヤーから取得する必要がある裏付け資料。猶予期間の導入により、輸出者は2021年1月1日から12月31日までの間、2022年1月1日までに取得することを条件に、宣誓書なしでも特恵関税を要求することが可能になった。EU官報によると、輸出者は、2022年1月1日までに宣誓書を取得していない場合、同年1月31日までに輸入者に通知することとしている。

原産地手続きそのものは原則として2021年1月1日から必要(注)で、サプライヤー宣誓書取得の猶予期間にかかわらず、品目別原産地規則(PSR)を満たしている必要がある。HMRCはガイダンスの中で、猶予期間終了後に過去にさかのぼって、宣誓書の提示を求める場合がある、としている。

関税分類と原産性判定の事前教示制度ガイダンスを更新

HMRCは2020年12月31日、2021年1月1日以降に輸出入を行う物品に関する、法的拘束力を持つ関税分類と原産性判定の事前教示制度のガイダンスも更新した。グレートブリテン島では新たに英国の制度である「事前関税分類教示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」「事前原産性教示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を開始する一方、北アイルランドでは従来のEUの「拘束的関税分類情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」「拘束的原産情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を継承する。

これらに基づき判定された関税分類と原産性は、従来制度と同じく原則3年間有効。原産性の事前教示は、いずれも自由貿易協定(FTA)などの特恵待遇要求に関わる判定のみが対象で、特恵関税以外に関する原産地規則の判定については、国際通商省(DIT)と協議するとしている。

HMRCは2020年12月末、英国の関税率検索データベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも更新。最恵国待遇(MFN)税率「UKグローバル・タリフ」(2020年5月20日記事参照)、一般特恵関税制度(GSP)に基づく税率(2020年11月12日記事参照)に加え、英EU通商・協力協定や日英EPA(経済連携協定)など、英国が締結したFTAの特恵税率も反映しており、国別・品目別に検索できる。

(注)EUからグレートブリテン島への輸入で、最長6カ月間の申告繰り延べ措置を利用する場合は、原産地申告は繰り延べ後の補足申告提出に合わせて実施する。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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