英EU協定、先進的な原産地手続きなど踏襲

(英国、EU)

ロンドン発

2020年12月28日

英国政府と欧州委員会は12月26日、前々日の24日に合意に達した(2020年12月25日記事同日付記事参照)英国とEUの通商・協力協定の条文案の全文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公開した。概略のみ公表していた協定の詳細が示され、英EU間取引でゼロ関税などの特恵待遇を受けるために必要な原産地規則や手続きの具体的内容(添付資料1参照)も明らかになった。

原産地規則では、英EU間での原材料・生産工程を含む完全累積となることがあらためて確認されたほか、品目別原産地規則(PSR)も明らかになった。PSRの例外として、ツナ缶やアルミニウム製品の一部では、より柔軟な別の基準を一定量まで認める。また、電気自動車やその蓄電池なども、2027年1月まで3段階で基準を引き上げることになった。PSRを満たせない場合でも、魚介類以外の飲食品などでは非原産材料の割合が製品重量の15%以下、繊維製品以外ではその割合が製品出荷価格の10%以下であれば、ごくわずかな非原産材料として無視できるという救済規定(デミニマスルール)を設けている。

原産地規則の構造や内容は、日EU経済連携協定(EPA)やEUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)など、近年のEUの自由貿易協定(FTA)やEPAの規定に似ている点も多い。例えば、十分な変更とみなされない非原産材料に対する生産工程(ミニマルオペレーション)や、第三国を経由する場合でも原産性が維持される基準(積送基準)などは、日EU・EPAや日英EPAとほぼ同じ内容となっている。

日EU・EPA規定などからさらに利便性を追求

取扱商品が英EU協定の原産地規則を満たしても、特恵待遇の要求(原産地手続き)を正しく行わなければ、関税は免除されない。同協定の原産地手続きの規定も、近年のEUのEPA/FTAと共通点が多く、申告方法は日EU/日英EPAと同じく、協定上の輸出者が原産地に関する申告文を作成するか、輸入者の知識に基づいて特恵待遇を要求する「自己申告制度」が採用された。原産地申告に記載する情報はCETAを踏襲している(2020年12月28日記事参照)。一方、輸入国税関は輸入者に対し原産地申告文の翻訳の提出を要求してはならないことや、輸入者は輸出者しか知り得ない情報は提供できないことを税関に回答できること、さらに、記録の保管義務に関する規定は日EU/日英EPAと実質的に同じだ(添付資料2参照)。

また、英EU協定で、輸出者が非原産材料の供給者から取得する「サプライヤー宣誓書」は附属書で様式が示されたほか、継続して供給を受ける場合、2年間効力を持つ「長期サプライヤー宣誓書」の様式も用意されている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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