EU復興基金にかかる執行方針を発表、3,000億ユーロ超の投資計画

(イタリア)

ミラノ発

2021年01月27日

イタリア経済・財務省は1月18日、「再興・回復のための国家計画(PNRR)」の内容を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。この計画は、2020年7月にEU加盟国間で合意に至った復興基金「次世代のEU」(2020年7月21日記事参照)で国別に配分される補助金と融資に基づき、イタリアとしての施策や執行方針を示したもので、政府が1月12日に閣議決定した(注1)。

「再興・回復のための国家計画(PNRR)」は、復興基金「次世代のEU」による予算が約2,240億ユーロ、イタリア独自の国家予算約800億ユーロ(注2)を合算した計約3,120億ユーロ規模の枠組みとなる(添付資料表参照)。内容は、(1)「デジタル化、イノベーション、競争および文化」、(2)「グリーン革命および生態学的変遷」、(3)「持続可能なモビリティーのためのインフラ」、(4)「教育と研究」、(5)「包摂と結束」、(6)「健康」の6つの柱で構成している。策定に当たっては、復興パッケージにおいてEU全体で共有されている重要項目のデジタル化や環境への配慮などがベースとなっているほか、イタリアは欧州委員会からの国別勧告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注3)で各種構造改革が促されていたが、投資の遅滞につながるような制約の軽減などの改革を進める施策も包含する。

「次世代のEU」に限ってみると、全体予算のうち、最大の割合が(2)「グリーン革命および生態学的変遷」に充てられる。欧州グリーン・ディールの2030年の目標を見据えた(2020年10月9日記事参照)温室効果ガスの削減や、水素サプライチェーンの発展などを盛り込む。一方、イタリアの国家予算を合算した場合、(5)「包摂と結束」に最大の予算が割かれるかたちとなっている。長年の課題である若者の就業率の引き上げや、経済停滞が顕著なイタリア南部の発展などに取り組むこととなる。

2021年に入っても新型コロナウイルス感染拡大が収まらずに見通しづらい状況の中、「これまでにないほど大規模な投資」(ロベルト・グアルティエーリ経済・財務相)を進め、デジタル化と環境政策の促進にも取り組みながら、経済の浮揚を目指す。

(注1)同計画案は4月30日までに欧州委員会に提出し、EUの審査を受ける。政府は計画の策定に当たり、欧州委との非公式な協議を行ってきたとしている。

(注2)2021年から2026年の複数年度にわたって支出される予定となっている。

(注3)EUレベルの経済・財政政策の協調枠組みであるヨーロピアン・セメスターでの国別勧告。欧州委が各国の経済政策を評価、勧告案を策定する。

(山崎杏奈)

(イタリア)

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