EU首脳、復興パッケージに合意

(EU)

ブリュッセル発

2020年07月21日

特別欧州理事会(EU首脳会議)が7月17~21日にかけてブリュッセルで開催され、復興基金「次世代のEU」と2021~2027年の次期中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)からなる復興パッケージの合意PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に至った。金融市場からの資金調達によって賄われる復興基金の規模は7,500億ユーロ、MFFの規模は、7月10日に提示されたミシェル常任議長の修正案(2020年7月13日記事参照)の線に従い、1兆743億ユーロで決着した。

当初の2日間の予定を大幅に超過した同会議を終えた欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長は21日の記者会見で、「本日の歴史的な合意は欧州が一つだという強いシグナルだ」と成果に胸を張った。

復興基金の大半は加盟国支援策「復興・回復ファシリティー」に

復興基金は5月27日の欧州委員会提案(2020年5月28日記事参照)の規模が維持されたが、返済不要の補助金が3,900億ユーロ、融資が3,600億ユーロとなり、当初案の補助金5,000億ユーロ、融資2,500億ユーロに比べ補助金部分が減った。

内訳をみると、加盟国が提示する復興計画に基づき、「新型コロナウイルス危機」による影響が大きい加盟国に優先的に割り当てられる「復興・回復ファシリティー」が6,725億ユーロと、大部分を占める。欧州委提案での規模5,600億ユーロから増額された。他方、欧州委提案の他の要素は全体的に圧縮された。例えば、化石エネルギー関連産業から新産業への移行を支援する「公正な移行基金」には100億ユーロが計上され、当初案の300億ユーロからは縮小。また欧州委は、将来の保健衛生上の危機に対処する目的で新保健プログラム「EU・フォー・ヘルス」の立ち上げを提案していたが、復興基金からは削除され、MFFに一部が残ったのみとなった。EUの次期研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」には復興基金から50億ユーロ(当初案では135億ユーロ)が計上され、MFFと合わせた規模は7年間で809億ユーロとなり、現行の中期予算での枠組み「ホライズン2020」とほぼ同額となった。

欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はミシェル常任議長と並んだ記者会見で、「『次世代のEU』は各国の復興計画を通じて、グリーンやデジタル化に向けられる」と述べ、復興基金がEUの政策方針を推進する手段になると説明した。

7月20日午前に、EU政策を専門とするベルギーのシンクタンクである欧州政策センター(EPC)が開催したオンラインセミナーで、EPCのファビアン・ズレーグ所長は今後、欧州議会の承認、さらに復興基金の主要な部分は加盟国議会の批准も必要となることを踏まえると、「合意は、長いプロセスの初期の段階」としつつも合意に達すること自体の意義を強調した。

(安田啓)

(EU)

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