欧州中銀、新型コロナウイルス対策で追加金融緩和を決定

(EU、ユーロ圏)

デュッセルドルフ発

2020年12月11日

欧州中央銀行(ECB)は12月10日、ドイツ・フランクフルトで開催した政策理事会後に記者会見を行い、ECBは主要政策金利については据え置く一方、危機対策の一環で導入されている「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」の規模拡充および期間の延長を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。新型コロナウイルスの感染が再び広がり、経済のさらなる減速への警戒が強まっていることを受けたもの。PEPPの規模を5,000億ユーロ増額し、1兆8,500億ユーロまで拡大するほか、資産購入期間について、9カ月間延長し、少なくとも2022年3月までとするとした。PEPPを通じて購入し保有する債券・国債の償還後の再投資については1年延長し、少なくとも2023年末まで継続する。

また、最大でマイナス1%という低金利で銀行に資金を貸し出す「貸し出し条件付き長期資金供給オペレーション(TLTRO-III)」についても、1年間延長し、2022年6月まで延長する。2021年6月から12月にかけて追加で3回のオペレーションを実施するほか、TLTRO-IIIでの銀行の借り入れ上限額の拡大も発表した。

ECBは、銀行がECBから資金供給を受ける際の担保資産要件の一時的な緩和措置を2022年6月まで延長するほか、2020年5月に導入されたパンデミック緊急長期資金供給オペレーション(non-targeted pandemic emergency longer-term refinancing operations: PELTRO)についても、2021年に4回のオペレーションを行う(2020年4月10日記事2020年5月1日記事参照)。また、ユーロシステムによる中央銀行向けレポファシリティ(Eurosystem repo facility for central banks: EUREP)について、期限を9カ月延長し、2022年3月までとする。EUREPは、ユーロ圏外の中央銀行に対し、適切な債務証券を担保にユーロの流動性を供給するため、2020年6月に開設されていた。ユーロシステムによる債券・国債の購入プログラム(APP:asset purchase programme)については、月額200億ユーロ規模での債券・国債の購入を継続する。

2021年以降の緩やかな回復を予測

記者会見に合わせて発表された、ユーロ圏に関するECBスタッフマクロ経済予測外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、2020年の実質GDP成長率を前回(2020年9月)予測値のマイナス8.0%からマイナス7.3%に上方修正したほか、2021年については5.0%から3.9%に、2022年については3.2%から4.2%にそれぞれ修正した(添付資料表参照)。なお、2023年については、新たに2.1%と予測した。消費者物価指数上昇率については、2020年は前回の0.3%から0.2%に下方修正した一方、2021年は1.0%、2022年は1.1%、2023年は1.4%との予測を示している。

(森悠介)

(EU、ユーロ圏)

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