欧州中銀、TLTRO-IIIの適用金利引き下げ、主要政策金利は据え置き

(欧州、EU、ユーロ圏)

デュッセルドルフ発

2020年05月01日

欧州中央銀行(ECB)は4月30日、ドイツ・フランクフルトで開催された政策理事会後の記者会見で、政策金利を前回発表(2020年3月13日記事参照)から据え置き、量的緩和政策についても現状を維持する一方、銀行への長期資金の貸し付け条件のさらなる緩和を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

TLTRO-IIIの適用金利を引き下げ、新たなプログラムも導入

ECB は今回の発表の中で、2019年3月から導入している、貸し出し条件付き長期資金供給オペレーション(TLTRO-III)について、2020年6月から2021年6月までは、主要リファイナンス・オペ金利、および、一定条件を満たす場合には預金ファシリティー金利から50ベーシスポイント(万分率)低い金利をそれぞれ適用するとした。

さらにECBは、ユーロ圏の金融システムの流動性を支援し、金融市場の円滑な機能を確保するため、条件を付けない「パンデミック緊急長期資金供給オペレーション(non-targeted pandemic emergency longer-term refinancing operations: PELTRO)」を新たに導入すると発表した。5月に開始し、2021年7~9月の間に他の担保緩和措置とともに段階的に終了する。

資産購入による量的緩和政策については、現状を維持する方針を示した。3月末から7,500億ユーロ規模で実施されている「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」を維持する(2020年3月19日記事参照)。期間は、新型コロナ危機の収束状況を踏まえるとし、従来想定の20年末を越えて継続する可能性にも含みを持たせた。

クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は、記者会見の中で、第1四半期のユーロ圏実質GDP成長率が前期比マイナス3.8%となったことを挙げ、第2四半期はさらなる悪化を予測。さらに、ECBスタッフによる経済予測に言及し、感染防止策の継続期間や企業、雇用者が直面する経済的影響の緩和策の成否によって、2020年のユーロ圏経済は5%から12%程度落ち込む可能性を指摘した。同総裁は「ユーロ圏内での野心的かつ協調的な財政スタンスが必要不可欠」とし、復興基金の早急な設立をはじめとした、さらなる施策に期待感を示した(2020年4月24日記事参照)。

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

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