新型コロナ禍でも半数近くの企業が雇用維持、2020年度米国日系企業実態調査

(米国)

米州課

2020年12月28日

ジェトロが12月22日に発表した「2020年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」(2020年12月22日記事参照)では、現地従業員数と日本からの派遣者(駐在員)数の変化を聞いた。現地従業員数については、過去1年の変化で「増加」と回答した企業は17.8%と前年(34.3%)から16.5ポイント減少し、2009年度調査(8.5%)に次ぐ低さとなった(添付資料図1参照)。「横ばい」は49.4%で、新型コロナウイルス禍でも半数近くの企業が雇用を維持し、「減少」は32.7%だった。業種別でみると、情報通信業では46.4%が現地従業員数を「増加」したが、鉄道・運搬車両などの部品(60.0%)や自動車などの部品(52.8%)では「減少」した企業は5割を超えた。今後の予定については、「増加」は33.2%で、「減少」は13.2%にとどまる。

過去1年の駐在員数の変化は「横ばい」と回答した企業が65.1%を占め、「減少」と回答した企業は27.0%に達した(添付資料図2参照)。業種別でみると、駐在員数を「減少」した企業の割合は、自動車などの部品(43.0%)や建設業(42.9%)、自動車など(41.2%)で4割を超えた。ジェトロ米国事務所が駐在員数の「減少」理由についてヒアリングを行ったところ、「新型コロナウイルス感染拡大前から駐在員の削減の方向で考えていた。正常化後も引き続き削減の方向で考えている」(鉄・非鉄・金属)、「日本からの出向社員を減らし、より現地化を図っている方向」(食料品)といった声が聞かれた。今後の予定については、「横ばい」が72.1%を占め、「減少」は18.3%、「増加」は9.6%だった。今後の「減少」理由として、「ビザ取得が難しくなっており、現地採用の比率を上げて行く予定」(食料品)、「現地スタッフもある程度経験を積んできたこと、コスト削減の観点から駐在員の削減を計画している」(一般機械)とのコメントがあった。

基本給や年間実負担額はおおむね上昇

同調査では、前年調査同様、在米日系企業の賃金額を聞いた。調査結果によると、2020年の職種別基本給(月額、各職種の中央値)は、工場ではオペレーター(製造工程における機械の操作に従事する職種)は3,000ドルで前年と同額で、メカニカル・エンジニア(機械および設備の設計・製作・管理などを行う技術職)は5,294ドルで前年比3.8%増、プロダクション・マネジャー(生産管理部門の課長クラス)は6,666ドルで0.3%減少した(添付資料図3参照)。事務職では、ゼネラル・クラーク(一般事務職)が3,988ドルで前年比6.3%増と職種別で最大の増加率となり、ゼネラル・アドミニストレーション・セクション・チーフ(総務部門の課長クラス)は6,446ドルで2.7%増加した。2020年度の全職種平均の昇給率(中央値)は2.4%と前年度(3.0%)から0.6ポイント低下し、2021年度の昇給率は2.0%が見込まれている。

年間実負担額(注)の中央値は、オペレーターが4万6,000ドル(前年比2.2%増)、メカニカル・エンジニアは7万6,000ドル(同4.4%増)、プロダクション・マネジャーは9万6,000ドル(同3.2%増)、ゼネラル・クラークは5万5,000ドル(同5.3%増)とそれぞれ前年から増加したが、ゼネラル・アドミニストレーション・セクション・チーフは9万ドルで前年と同額だった(添付資料図4参照)。年間賞与の中央値はオペレーターとメカニカル・エンジニアは0.5カ月で、それ以外は1.0カ月だった。

(注)1人当たり社員に対する負担総額(基本給、諸手当、社会保障、賞与、残業代などの年間合計、退職金は除く)、2020年度見込み。

(中溝丘)

(米国)

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