日系企業の景況は急速に改善、ジェトロ調査

(ロシア)

モスクワ発

2020年11月02日

在ロシア日系企業の景況が急速に改善しつつある。ジェトロが10月8~23日に実施した在ロシア日系企業景況感調査によると、「新型コロナ禍」の影響が深刻だった5月時点(2020年6月10日記事参照)に比べ、自社の景況感(最近の状況)DI(注)が55ポイント増のマイナス4とV字回復をみせている(添付資料図1参照)。他方、今後の事業展開見通しについては、感染第2波の到来や地政学的リスクの高まりを背景に先行きを懸念する声が上がっている。

自社の景況見通し(2カ月後の状況)DIも52ポイント増のマイナス10と改善した。一方で、「新型コロナ禍」の影響で販売が思うように伸びない企業もいまだに多く、業種や商材によって景況はまだら模様となっている。自動車産業は低調ながらも持ち直しがみえており(2020年10月29日記事参照)、他の消費財を扱う企業の景況もおおむね改善しているが、物流や設備機器を扱う企業の状況は悪化したままだった。

販売価格については、長引くルーブル安の影響を受けて上昇傾向にあり、各社の売上高を押し下げる要因となっている。在庫状況は経済活動制限が緩和された後の急な消費増を受けて不足気味の企業もあった。資金繰りについては「新型コロナ禍」以前の水準まで回復しつつある。

今後1~2年の事業展開見通しを聞いたところ、「拡大」と回答した企業は前回結果を8ポイント上回る24%となり、「維持」(70%)と合わせて、94%の企業が事業の維持・拡大を図る意向だ(添付資料図2参照)。一方、感染第2波を受けて収束時期や経済回復の見通しが読めないことや、ロシア周辺国の地政学的リスクの高まりなど先行きを不安視する声も聞かれる。このほか、オンラインやデジタルトランスフォーメーション(DX)を中心に事業再編を検討している企業もみられた。

今回の調査は、モスクワ・ジャパンクラブ商工部会とサンクトペテルブルク日本商工会の協力の下、ロシアに所在する日系企業約250社を対象に実施し、96社から回答を得た。回答企業のうち、製造業は18社、非製造業(メーカーの販売会社を含む)は78社だった。

(注)景気動向指数:ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略。「良い」と回答した企業の比率から「悪い」と回答した企業の比率を引いた数値。

(戎佑一郎)

(ロシア)

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