新型コロナウイルスの影響で日系企業の景況はリーマン・ショック後並みに悪化

(ロシア)

モスクワ発

2020年06月10日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響を受け、在ロシア日系企業の景況が著しく悪化している。ジェトロが5月20~29日に実施した在ロシア日系企業景況感調査によると、2020年1月の前回調査(2020年2月7日記事参照)に比べ、自社の景況感(最近の状況)DI(注)は62ポイント減のマイナス59、自社の景況見通し(2カ月後の状況)DIは61ポイント減のマイナス62と、ともに大きく下降し、リーマン・ショック後並みに悪い結果になった(添付資料図参照)。

COVID-19拡大に伴う外出禁止措置などによる経済活動の制限や、3月からの原油価格の暴落による通貨ルーブル安が影響した。具体的には、新規の契約や受注、出荷の停止を余儀なくされる、取引先の経営難により債権回収が困難になるといった問題が多くの日系企業で生じている。

1~2年後の事業展開見通しについては、引き続きロシア市場のポテンシャルを評価し、8割が現状維持または事業拡大と回答。他方、「拡大」の回答率が前回と比べ半減(33%→16%)し、今後の事業展開をより慎重に見通す傾向が表れた。COVID-19が収束しても経済回復の時期が読めない、という声が上がる一方、状況が落ち着けば引き続き潜在的な需要が望める、COVID-19の影響は全世界的なものでロシアに限って事業縮小を考えることはない、事業ポートフォリオの見直し・組み換えを図り経済回復に備えるといった、中長期的な視点で事業展開の継続を考える企業もみられた。

COVID-19を意識した今後の「ニューノーマル」に向けた取り組みについては、8割以上の回答企業が今後もテレワークを継続する方向。今後の事業戦略やビジネスモデルの見直しについては、回答企業の約半数が取り組むとしている。中でも、販売戦略を見直す企業が多く、消費財を扱う企業を中心にオンライン販売の導入を検討する動きもみられる。製造業では、半数以上が財務状況の見直しを挙げており、調達先の見直しを行う企業も出ている。

今回の調査は、モスクワ・ジャパンクラブ商工部会とサンクトペテルブルク日本商工会の協力の下、ロシアに所在する日系企業約250社を対象に実施し、101社から回答を得た。回答企業のうち、製造業は17社、非製造業(メーカーの販売会社を含む)は84社だった。

(注)景気動向指数:ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略。「良い」と回答した企業の比率から、「悪い」と回答した企業の比率を引いた数値。

(戎佑一郎)

(ロシア)

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