バグダッドでデモ隊の拠点を撤去、「グリーン・ゾーン」も一部開放

(イラク)

ドバイ発

2020年11月04日

AP通信(10月31日付)によると、イラク治安部隊は同日、政権への抗議デモの拠点となっていたバグダッド市内中心部のタハリール広場から、デモ隊の座り込み用のテントなどを撤去したと発表した。また、同広場から、首相府や国民議会をはじめとした政府機関や各国大使館などが立地する「グリーン・ゾーン」につながるティグリス川架橋「ジュムフリヤ橋」などの封鎖も解除したとした。デモが拡大した2019年10月以降、タハリール広場はデモ隊によって占拠、ティグリス川架橋は治安部隊によって封鎖されており、いずれも一般市民に開放されるのは1年ぶりとなる。

27日にはイラクのムスタファ・アル・カディミ首相が「グリーン・ゾーン」をまたぐ通行の一部再開を関係機関に指示したと報じられていた。同区域は旧米軍管理領域で、2003年のイラク戦争以降、治安部隊により立ち入りが厳しく制限されてきた。2018年11月に15年ぶりに一般通行が一部で許可されたが、政府への抗議デモが継続する中であらためて封鎖されていた。市中心部にある同区域の遮断は市民にとって大きな交通上の制約となっており、再開を歓迎する声が現地でも聞かれている。

政府への抗議活動は、新型コロナウイルスの感染拡大による外出制限などの影響を受けながらも継続されてきた。10月25日には、アブドルマフディ前政権の発足1周年を契機とした大規模デモの呼びかけ(2019年11月1日記事参照)から1年が経過したことを受け、各地で数千人規模のデモが行われていた。しかし、今回のデモ隊の拠点撤去と「グリーン・ゾーン」の開放に際しては、大きな混乱はみられず、政府当局とデモ当事者の間で何らかの協議が進展したものと予想される。

新型コロナウイルスの状況については、6月に2度目のロックダウンが行われて(2020年6月8日記事参照)以降、段階的に制限措置を緩和しており、7月には空港を再開、9月には店舗の営業制限やレストランでの飲食などを解禁、夜間外出制限も終了した。しかし、緩和措置に伴い、累計で46万人以上(10月29日時点)と、今や中東諸国ではイランに次ぐ感染者数を記録しているほか、直近2週間の平均値でも1日当たりの新規感染者は3,500人を超えており、その対策は大きな課題だ。カディミ政権の発足(2020年5月8日記事参照)から約半年が経過する中、一定の成果は見えるものの、難しいかじ取りが続いている。

(田辺直紀、オマール・アル=シャマリ)

(イラク)

ビジネス短信 0c1a008dd9ae1b01