イラクで2度目のロックダウン、新内閣の顔ぶれがそろうも国難続く

(イラク)

ドバイ発

2020年06月08日

イラク国民議会は6月6日、前月発足したムスタファ・アル・カディミ新政権(2020年5月8日記事参照)において保留となっていた7つの閣僚ポスト(石油相、外相、貿易相、文化相、農業相、正義相、移民相)を承認した。2018年に発足したアブドルマフディ前政権では、主要閣僚がそろうまでに発足から8カ月を要したのとは対照的に(2019年7月2日記事参照)、今回のカディミ政権は、前政権では長期にわたる係争の的となった内務相・防衛相などを発足時におさえたことに加え、外相、石油相、貿易相など他の主要ポストも含めた全てのポストを、発足から「わずか1カ月」でそろえるという迅速な滑り出しになった。

イラクでは、2020年4月下旬からのラマダン月に合わせて外出規制が緩和されたが(2020年5月1日記事参照)、その後、徐々に新型コロナウイルス新規感染者数が増加し、ラマダン月明け祝祭期間(イラクでは5月24~28日)から、あらためて24時間の外出禁止が敷かれている。カディミ首相は6月6日に声明を出し、現在のロックダウンを6月13日まで延長し、その翌日から夜間(午後6時から午前5時まで)のみの外出禁止に緩和することを発表したが(外務省ホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、1日当たりの新規感染者は1,000人を超えるまでになっており、予断を許さない状況だ。5月の政権発足後、外出が可能だった期間に、各地で政権に対する抗議行動が行われていたことも流行再拡大の一因とみられる。同首相は、2019年来の反政府デモ隊に対する武力行使の責任追及や逮捕者の釈放に言及するなど、デモ隊への懐柔姿勢をみせているが、ひとたび規制を緩和すればデモの再燃が懸念され、難しいかじ取りを迫られている。

いったんは夜間の商店街やレストランがにぎわうなど、新型コロナウイルス感染拡大以前の光景が戻ったクルディスタン地域でも、5月31日には同地域における過去最多を大幅に更新する1日100人以上の新規感染を記録し、翌日からロックダウンが再開した。地域内では早期の規制緩和とビジネスの再開を求め、各地で抗議活動が起こるなど、ロックダウンが長期化する中で、市民の不満が顕在化している。

(田辺直紀、オマール・アル・シャマリ)

(イラク)

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