大豆、工業製品、鉱物などの輸出税率の一部引き下げ発表
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2020年10月06日
アルゼンチンのマルティン・グスマン経済相は10月1日、大豆や工業製品、鉱物などの一部の輸出税率引き下げを含む経済対策を発表した。今回の対策は主に工業と農業、建設業に向けられ、高付加価値の生産や輸出の促進を目的としている。グスマン経済相は「外貨準備高を積み上げながら、(国の)強みを生み出す必要がある」とし、「今回の発表は、わが国の経済回復を促すためのロードマップにつながっている」と述べた。
輸出税の引き下げに関しては、まず、大豆にかけている税率33%を10月は30%に引き下げた。その後、11月に31.5%、12月に32%に引き上げ、2021年1月には再び33%に戻る。政府は2020年3月5日付で大豆関連品目に対する同税率を30%から33%に引き上げていた(2020年3月17日記事参照)。大豆油や大豆粉などについては、現在の税率33%を10月に27%に引き下げた後、11月から2021年1月まで徐々に30~31%までに引き上げていく。バイオディーゼルでは、税率30%を10月には26%に引き下げ、2021年1月まで徐々に29%に引き上げていく方針。
他方、工業製品では、最終製品の輸出税率を0%、工業向け消耗品は3%に引き下げる。ただし、完成車に関しては限定的で、メルコスール域外向けでさらに輸出を増加させた場合に限り、完成車の輸出税率を0%とする。鉱物については、10月1日付政令785/2020を公布し、輸出税率を12%から8%に引き下げた〔対象品目の詳細は同政令付属書(ANEXO)を参照〕。
ほかにも、輸出還付制度の見直しや、建設業では新規プロジェクトへの投資を促すための税制上の優遇措置などを進める方針が伝えられた。
10月2日付の現地紙「ラ・ナシオン」によると、今回の政府発表に対する関連企業団体側の反応は分かれている。工業、建設、鉱業などに関連している国内の代表的な団体からは「経済回復に向けた第一歩」だと賛同する声が上がった。一方で、農牧協会などからは「現状の課題を解決する対策ではない。(生産者による国内為替相場を通じて)外貨決済につながることはない」と主張した。同紙によると、企業家やエコノミストらは「(投資家による)信用を取り戻すには不十分な対策」という意見で一致している。
足元では、外貨準備高の減少による外貨取引規制の強化(2020年9月17日記事参照)や通貨ペソの対ドルレート下落、為替市場の複雑化(複数の為替レートの存在、公定レートと闇レートの乖離率の拡大)などが問題視されている。10月3日付の現地紙「アンビト」によると、ルイス・バステーラ農業相はラジオ番組のインタビューで「大豆生産者は約1,700万~1,800万トンの大豆を蓄えていて、これらは約70億ドルに相当する。今回の対策によって(生産者が大豆を売り)外貨決済を行うことで、30億から50億ドルを国内に還流すれば、外貨準備高の状況が緩和できる」と述べた。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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