対中技術競争における多国間協調を提言、米シンクタンク調査
(米国、中国)
ニューヨーク発
2020年10月22日
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は10月13日、独自に行った調査に基づき、長期的な対中政策立案に向けた具体的な提言を示した。米国世論や欧米・アジアの有識者を対象に実施した同調査について、有事対応や人権問題に関わる調査結果、CSISの政策提言を概説する。主な結果は以下のとおり。
中国から同盟国を守る有事を想定
中国からの軍事脅威にさらされた同盟国を防衛する価値を10段階で評価した場合、米世論・有識者ともに「リスクをとる価値がある」がいずれの同盟国でも優勢で、米識者の間では日本(8.86ポイント)が最も高い。他方、米中間で軍事衝突に発展する可能性は「あり得るが、低い」と考える割合は、米識者(83%)、欧州・アジアの識者(74%)、米世論(60%)のいずれでも6割以上となる。
中国における人権尊重を重視
中国における人権問題については、欧米・アジア有識者・米世論ともに改善が重要との意見が多数を占める。中国での人権問題改善のための具体策としては、米国の有識者の約半数(49%)が、中国政府に対する非難声明と特定対象への経済制裁の組み合わせが適切と回答している。
大統領候補への見方は割れる
欧州・アジアの有識者の過半数(61%)が、大統領選挙の民主党候補であるバイデン前副大統領の方が中国に対処する準備ができていると回答する一方、共和党候補のトランプ大統領の方が対処する準備ができていると答えた割合はインド(48%)やベトナム(54%)で高く、バイデン氏を上回る。
輸出管理規制の調和やデジタル貿易協定の推進を提言
CSISは、調査を踏まえた政策提言として、2020年10月に東京で開催された米豪印外相会合〔「Quad(クアッド)」〕(2020年10月8日記事参照)の重要性を指摘する。ASEAN地域フォーラムやEUはコンセンサス形成が必要で、中国の取り込みに弱いことから、CSISはクアッドなど少数グループを通じた軍事や外交、機密情報の共有での協力体制の制度化に期待を寄せている。
中国との技術競争については、通信技術に関するクリーン・パス構想(2020年8月7日記事参照)に向けて、日本や韓国、台湾など先端技術を有する国・地域との輸出管理上の協調や、デジタル貿易協定によるルール設計の必要性を強調した。また、大統領選挙を見据え、トランプ大統領が再選した際には欧州との関係見直しを、バイデン氏の勝利時には中国の軍事脅威下にある東南アジア諸国との関係強化をそれぞれ求めている。
(藪恭兵)
(米国、中国)
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