欧州委、重要な原材料の安定的確保に向け、官民協働のアライアンス発足

(EU)

ブリュッセル発

2020年10月01日

欧州委員会は9月29日、重要な原材料の戦略的な確保を目指す官民協働モデルである欧州原材料アライアンス(European Raw Materials Alliance:ERMA)を発足外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますさせた。背景には、欧州委が推進している欧州グリーン・ディール(2019年12月12日記事参照)やデジタル化への移行政策によるさまざまな原材料の需要予想の高まりや、EUの戦略的将来予測報告書(2020年9月10日記事参照)が指摘する重要な原材料の供給における特定の第三国への過度の依存による地政学的な安全保障上のリスクなどがある。

そこで、欧州委は重要な原材料を選定し、その持続可能かつ安定的な確保に向け、行動計画(2020年9月4月記事参照)を策定していた。ERMAの発足はこうした行動計画に基づく政策の第1弾となる。欧州委が先行事例と位置付ける欧州バッテリー同盟(EBA)(2018年10月17日記事参照)をモデルに、大企業からスタートアップ企業まで産業界のさまざまな企業や加盟国、地方自治体、欧州投資銀行(EIB)、投資家、社会的パートナー、市民社会などを巻き込み、重要な原材料の長期的な確保における課題を洗い出し、2025年までに実施可能な投資計画をまとめる予定だ。ERMAには、既に100を超える産業界のパートナーや約40の産業団体、欧州地質学者連盟、労働組合、環境NGOなどが参加を表明している。

当面の目標は、レアアースの供給における中国依存の軽減

ERMAが特に念頭に置くのは、レアアース(希土類)だ。レアアースは、風力発電機や電気自動車などに利用されることから、その需要が今後最大10倍にまで増えると見込まれている。しかし、現在その供給は中国からの輸入にほぼ全面的に依存している。加盟国内にもレアアースは埋蔵されていることから、産業界とともに採掘計画を進め、民間からの投資を呼び込むことで、EU域内でのレアアース開発を加速させたい考えだ。加えて、レアアースの再利用やリサイクルなど、EU域内での循環性を向上させることで、レアアースに関するEUの戦略的な自立性を包括的に高めていくことを目指す。

(吉沼啓介)

(EU)

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