欧州委、結成1年迎えた欧州バッテリー同盟で報告

(EU)

ブリュッセル発

2018年10月17日

欧州委員会は10月15日、結成(2017年10月11日)から約1年を迎えた「欧州バッテリー同盟(EBA)」の進捗状況・最新動向についての報告を発表した。EBAは電気自動車(EV)用電池など戦略分野における、EU域内産業の競争力強化を目指しており、EU域内企業によるEV用電池の生産プロジェクトが相次いで立ち上げられている。

同盟結成から約1年で企業参入が相次ぐ

欧州委のマレシュ・シェフチョビチ副委員長(エネルギー同盟担当)は、この1年間のEBAの取り組みを評価し、「欧州投資銀行(EIB)や各国政府、産業界との協働により、EUとして、さまざまなプロジェクトを目にすることができるようになった。今や持続可能な電池生産を中核に据えた、競争力のあるバリューチェーンが欧州で構築されつつある」と語った。

また、欧州委のエルジビエタ・ビェンコフスカ委員(域内市場・産業・起業・中小企業担当)は「EBAはEUの産業政策の根幹を担うもので、力強い電池産業は、EUが進めている低炭素型自動車社会構想とも適合するもの」と指摘、EV用電池産業への期待感をにじませた。同時に、同委員はEBAの役割はEV(乗用車)に限らず、トラック、船舶などの分野でも貢献が期待できるとの認識を示した。

EUは域内における電池産業育成を含む戦略的行動計画(2018年5月発表)を明らかにしているが、「競争力」「高品質」「安全性」といった商品供給に関わる要素に加えて、「持続可能性」「リサイクル可能性」「エコシステム」など原料調達や廃棄処理、商品・技術開発、人材育成など幅広い要素も重視する方針を打ち出しているのが特徴だ。

今回の報告によれば、こうしたEUの呼び掛けに呼応するプロジェクトは既に多数存在しているという。その嚆矢(こうし)となったのが、スウェーデンの新興企業ノースボルトに対するEIBの融資プロジェクト(2018年2月27日記事参照)で、同社の立ち上げ段階から、ドイツ高級自動車大手BMWグループ、ベルギー非鉄金属大手ユミコアとの業務提携(2018年10月15日発表)など事業拡大局面に突入している。ノースボルトは、2019年下半期から生産を開始する見通しだ。

このほかにも欧州委は、フランスのリチウムイオン電池大手SAFTがドイツの電機大手シーメンス、ベルギーの化学大手ソルベイ、ユミコアなどと共にコンソーシアムを組み、2018年2月22日に発表した次世代電池開発プロジェクトや、エネルギー貯蔵技術に着目したFAAM(イタリア)の取り組みなどを報告している。

(前田篤穂)

(EU)

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